3 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 00:12:22 ID:CwN
梓「のようなものですね」
唯「ほんとー? あずにゃんと結婚できるなら嬉しいよ!!」
先輩はにっこにこしながら私の目を見ていた。おそらく本気になんてしていない。
手元のレモネードを軽く口につけてから、もう少し言葉を続けてみる。
梓「先輩は女の子同士の結婚ってどう思ういます?」
唯「ん~、そだね~」
少し斜めに視線をやってから、またにへらと笑って、
唯「難しいことはよくわかんないけど、あずにゃんとなら毎日幸せだね~」
と軽く返す。…なんだか恥ずかしくなってくるじゃないか。
唯「ほんとー? あずにゃんと結婚できるなら嬉しいよ!!」
先輩はにっこにこしながら私の目を見ていた。おそらく本気になんてしていない。
手元のレモネードを軽く口につけてから、もう少し言葉を続けてみる。
梓「先輩は女の子同士の結婚ってどう思ういます?」
唯「ん~、そだね~」
少し斜めに視線をやってから、またにへらと笑って、
唯「難しいことはよくわかんないけど、あずにゃんとなら毎日幸せだね~」
と軽く返す。…なんだか恥ずかしくなってくるじゃないか。
4 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 00:18:52 ID:N7r
先輩達が卒業してから2年。先輩は大学生活が、私は無事受験も終えて安定してきたころだった。私は先輩達と同じ大学を受けなかった。もう少し上の大学を目指せる成績は持っていたし、なによりもーーまた先輩達のいない後ろを追うのは、もうごめんだった。
唯「でもあずにゃんがそんな冗談言うなんて、めずらしーね。可愛いけど」
梓「っ…可愛いはつけなくてもいいですから」
ほら、やっぱり信じてない。私は半分残ったショートケーキを一口頬張った。
唯「でもあずにゃんがそんな冗談言うなんて、めずらしーね。可愛いけど」
梓「っ…可愛いはつけなくてもいいですから」
ほら、やっぱり信じてない。私は半分残ったショートケーキを一口頬張った。
5 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 00:28:39 ID:N7r
唯「ねぇ、新しい大学生活はどう?」
先輩は身を乗り出して聞いてくる。
梓「そうですね…まあまあです。ゼミは教授がとっても面白い人です。授業も高校と違いますね」
唯「えー? べんきょーが楽しいの…?あずにゃん堅ーい」
梓「先輩は大学に何しに行ってるんですか…」
唯「お菓子?」
梓「唯先輩、成長してないです」
唯「んま! この子ったらいつの間にそんな口きくようになったのかしら!」
ほっぺをぷーぷー膨らませて反論する。いつかの律先輩を思い出した。
成長してない、なんて嘘。唯先輩は昔より、どことなく大人っぽくなっている。言動に現れないなにか。私が昔魅力されたものに、磨きがかかっている。
先輩は身を乗り出して聞いてくる。
梓「そうですね…まあまあです。ゼミは教授がとっても面白い人です。授業も高校と違いますね」
唯「えー? べんきょーが楽しいの…?あずにゃん堅ーい」
梓「先輩は大学に何しに行ってるんですか…」
唯「お菓子?」
梓「唯先輩、成長してないです」
唯「んま! この子ったらいつの間にそんな口きくようになったのかしら!」
ほっぺをぷーぷー膨らませて反論する。いつかの律先輩を思い出した。
成長してない、なんて嘘。唯先輩は昔より、どことなく大人っぽくなっている。言動に現れないなにか。私が昔魅力されたものに、磨きがかかっている。
7 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 00:42:29 ID:N7r
唯「そういうあずにゃんは成長したねー。ますます…なんだろ、凛々しい? っていうのかな。そんな感じー」
梓「そうですか? 自分じゃよくわかりませんね」
唯「うっ…立派に成長して…お母さん嬉しい」
梓「誰がお母さんですか、誰が」
唯「お父さん認めんぞ! そんな知らんちんちくりーな男と結婚なんて!!」
梓「なんでそんな話になってるんですか!!」
唯「うん、梓ちゃんが決めた人ならいいと思うよ」
梓「憂似てますけども!!」
思わず声が大きくなってしまった。まるで少し昔に戻ったみたい。
大体なんですか先輩は。それは男じゃ、なくて…ああ、いや、そこじゃないか。
えへへ、と笑みをこぼしながら先輩は手元の紅茶に口をつけた。その紅茶、紬先輩のとどっちが美味しいですか。聞くまでもなさそうだけど。
梓「そうですか? 自分じゃよくわかりませんね」
唯「うっ…立派に成長して…お母さん嬉しい」
梓「誰がお母さんですか、誰が」
唯「お父さん認めんぞ! そんな知らんちんちくりーな男と結婚なんて!!」
梓「なんでそんな話になってるんですか!!」
唯「うん、梓ちゃんが決めた人ならいいと思うよ」
梓「憂似てますけども!!」
思わず声が大きくなってしまった。まるで少し昔に戻ったみたい。
大体なんですか先輩は。それは男じゃ、なくて…ああ、いや、そこじゃないか。
えへへ、と笑みをこぼしながら先輩は手元の紅茶に口をつけた。その紅茶、紬先輩のとどっちが美味しいですか。聞くまでもなさそうだけど。
9 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 00:46:40 ID:n5l
いやいや素晴らしい!
でもこの手のスレたて逃げ野郎が喜んでしまうのは腹立たしい気もするが
でもこの手のスレたて逃げ野郎が喜んでしまうのは腹立たしい気もするが
10 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 00:55:50 ID:N7r
唯「そういえば、あずにゃんは大学でのバンドは組んだりするのー?」
梓「あ、いや、まだ…」
決めていない、というよりやる意味が見当たらない。大学に入学して、音楽系のサークルは回ってみた。
でも、なんというか、どれも私がしたかった『音楽』ではなかった。
早弾きの上手い人、スラップベースがかっこいい人、安定感抜群のドラム、ソロが綺麗なキーボード。上手い人は何人もいた。だけど、私を魅了するものはそこになかった。
放課後ティータイムの、あの『音楽』が。
そんなこんなでまだサークルすら決まっていない。お声だけどんどんかかるけど。
唯「もったいないなぁ…。あ、でもあずにゃんの可愛さに気づいた人にあずにゃんを取られちゃう…!? 許さないよ!!」
梓「誰に怒ってるんですか!」
唯「やだよーとられたくないよー」
そう言って先輩は私の頭をわしわしわしわし。
梓「ぎにゃー!!」
唯「はっ…この毛並み、なんという柔らかさ…」
梓「ちょ、周りの人見てますからぁ!! にゃー!?」
唯「ほれほれ、ここがええんか!」
梓「もー、にゃ、やめてください!!」
思わず先輩の頭をチョップ。
唯「ぎにゃー!!」
先輩も鳴いた。
梓「あ、いや、まだ…」
決めていない、というよりやる意味が見当たらない。大学に入学して、音楽系のサークルは回ってみた。
でも、なんというか、どれも私がしたかった『音楽』ではなかった。
早弾きの上手い人、スラップベースがかっこいい人、安定感抜群のドラム、ソロが綺麗なキーボード。上手い人は何人もいた。だけど、私を魅了するものはそこになかった。
放課後ティータイムの、あの『音楽』が。
そんなこんなでまだサークルすら決まっていない。お声だけどんどんかかるけど。
唯「もったいないなぁ…。あ、でもあずにゃんの可愛さに気づいた人にあずにゃんを取られちゃう…!? 許さないよ!!」
梓「誰に怒ってるんですか!」
唯「やだよーとられたくないよー」
そう言って先輩は私の頭をわしわしわしわし。
梓「ぎにゃー!!」
唯「はっ…この毛並み、なんという柔らかさ…」
梓「ちょ、周りの人見てますからぁ!! にゃー!?」
唯「ほれほれ、ここがええんか!」
梓「もー、にゃ、やめてください!!」
思わず先輩の頭をチョップ。
唯「ぎにゃー!!」
先輩も鳴いた。
13 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 07:01:08 ID:WzX
新しくスレ建てればいいんじゃないの
楽しみにしてる
楽しみにしてる
17 :なんというミス投稿 :2015/02/10(火) 18:27:43 ID:N7r
唯「うう…あずにゃん反抗期…」
梓「お、思わず手が出ちゃっただけです! …すみません」
唯「じゃあもう一回撫でさせて?」
梓「…ダメです」
不意に顔が熱くなるのを感じながら、目線を窓の外へやった。喫茶店の外の小雨は、私の体温をさらに自覚させる。
梓「雨、降ってきちゃいましたね」
唯「そだねー。ギー太濡らしたら大変なことになっちゃいそう」
梓「先輩の場合は自分が濡れてくるじゃないですか」
唯「ふふーん! 今はもうそんなこと起きないよ! 雨が降った日はゴミ袋被せてるからね!!」
どやぁ、とばかりの自慢げな表情。
梓「…あの、ギターケースに被せるレインコート売ってるの、知ってますか?」
唯「へ?」
梓「普通に、どこでも売ってますけど」
唯「そ、そんな…こうして持ち歩かなくてもいいんだ…」
みるみるうちに眉が下がっていく。先輩の一挙一動を面白く、可愛いなんて思うのは失礼だろうか。
梓「お、思わず手が出ちゃっただけです! …すみません」
唯「じゃあもう一回撫でさせて?」
梓「…ダメです」
不意に顔が熱くなるのを感じながら、目線を窓の外へやった。喫茶店の外の小雨は、私の体温をさらに自覚させる。
梓「雨、降ってきちゃいましたね」
唯「そだねー。ギー太濡らしたら大変なことになっちゃいそう」
梓「先輩の場合は自分が濡れてくるじゃないですか」
唯「ふふーん! 今はもうそんなこと起きないよ! 雨が降った日はゴミ袋被せてるからね!!」
どやぁ、とばかりの自慢げな表情。
梓「…あの、ギターケースに被せるレインコート売ってるの、知ってますか?」
唯「へ?」
梓「普通に、どこでも売ってますけど」
唯「そ、そんな…こうして持ち歩かなくてもいいんだ…」
みるみるうちに眉が下がっていく。先輩の一挙一動を面白く、可愛いなんて思うのは失礼だろうか。
18 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 18:36:09 ID:N7r
梓「というか、持ち歩いてるんですか?」
唯「うん。ほら、いつも持ってないと忘れちゃうからね」
そう言って先輩はクリーム色のバックから似つかわしくないようなゴミ袋を取り出しはじめた。相変わらず自由だ。
梓「どうなんですかそれは」
唯「これならいつ雨が降っても大丈夫です!」
梓「それなら、折りたたみ傘も持ってますよね?」
唯「へ?」
気の抜けた返事。
唯「わ、忘れちゃった!! どうしよ…ってわー少し強くなってるーー!?」
梓「…そんな気はしてましたけど。仕方ないですね。そろそろ出ましょうか」
唯「今出たらびちょぬれになっちゃう…」
唯先輩はそのままテーブルにゆっくり突っ伏してしまった。私はコートの袖に手を通し、窓際にかけていた傘を手にとった。そして、唯先輩の服の袖を引っ張って、
梓「一緒に、入りましょう」
と、できるだけそっけなく言ってみた。
唯「うん。ほら、いつも持ってないと忘れちゃうからね」
そう言って先輩はクリーム色のバックから似つかわしくないようなゴミ袋を取り出しはじめた。相変わらず自由だ。
梓「どうなんですかそれは」
唯「これならいつ雨が降っても大丈夫です!」
梓「それなら、折りたたみ傘も持ってますよね?」
唯「へ?」
気の抜けた返事。
唯「わ、忘れちゃった!! どうしよ…ってわー少し強くなってるーー!?」
梓「…そんな気はしてましたけど。仕方ないですね。そろそろ出ましょうか」
唯「今出たらびちょぬれになっちゃう…」
唯先輩はそのままテーブルにゆっくり突っ伏してしまった。私はコートの袖に手を通し、窓際にかけていた傘を手にとった。そして、唯先輩の服の袖を引っ張って、
梓「一緒に、入りましょう」
と、できるだけそっけなく言ってみた。
19 :ID変わってなかったし :2015/02/10(火) 18:45:39 ID:N7r
梓「というか、持ち歩いてるんですかそれ」
唯「もちろん! これでいつ雨が降ってもだいじょうぶー!!」
そう言って先輩はクリーム色のバックから似つかわしくないようなゴミ袋を取り出した。
梓「…じゃあ、折りたたみ傘ももちろんもってますよね?」
唯「へ?」
気の抜けた返事。
唯「わ、忘れちゃった! どうしよ…って、少し強くなってるーー!?」
梓「何となく予想はしてましたけど…しょうがないですね。そろそろ出ましょうか」
唯「今出たらびちょぬれになっちゃう…」
先輩はそのままゆっくりと机に突っ伏した。私はコートの袖に手を通し、窓際にかけていた傘を手にとる。そして、先輩の服の袖をつまんで、
梓「一緒に、入りましょう」
と、できるだけそっけなく言ってみた。
唯「もちろん! これでいつ雨が降ってもだいじょうぶー!!」
そう言って先輩はクリーム色のバックから似つかわしくないようなゴミ袋を取り出した。
梓「…じゃあ、折りたたみ傘ももちろんもってますよね?」
唯「へ?」
気の抜けた返事。
唯「わ、忘れちゃった! どうしよ…って、少し強くなってるーー!?」
梓「何となく予想はしてましたけど…しょうがないですね。そろそろ出ましょうか」
唯「今出たらびちょぬれになっちゃう…」
先輩はそのままゆっくりと机に突っ伏した。私はコートの袖に手を通し、窓際にかけていた傘を手にとる。そして、先輩の服の袖をつまんで、
梓「一緒に、入りましょう」
と、できるだけそっけなく言ってみた。
21 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 19:13:49 ID:N7r
唯「傘忘れた時はね~、憂もこうさせてくれるんだよ!」
梓「…そうですか」
唯「憂もあずにゃんも大学生だよ…どんどん私から離れちゃうよ~」
先輩は私の腕に抱きつきながらそう話す。私は少し先輩に寄りながらあることを思い出す。
憂。
憂は私の大切な親友で、バンド仲間で、可愛くて、何でも器用で、私の誇れるーーライバルだ。だった。
梓「…そうですか」
唯「憂もあずにゃんも大学生だよ…どんどん私から離れちゃうよ~」
先輩は私の腕に抱きつきながらそう話す。私は少し先輩に寄りながらあることを思い出す。
憂。
憂は私の大切な親友で、バンド仲間で、可愛くて、何でも器用で、私の誇れるーーライバルだ。だった。
22 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 19:24:10 ID:N7r
私がこの想いに気付いた時、わたしは知ってしまった。憂も、そういう意味で好きなんだろうと。
普通に話してる時も、時折出てくる先輩の話で顔がほころんでいた。唯先輩のことを話す憂はいつだって素敵な目をしている。そんな憂に、私が勝てる見込みはなかった。
だから、先週の電話のときーー
梓『憂』
憂『んー? どうしたの?』
梓『私、唯先輩のことが好き』
ついに、言ってしまった。言わなくても良かったのかもしれない。言わない方が良かったのかもしれない。それでも、もう私の気持ちを押し込めるのは無理だった。
普通に話してる時も、時折出てくる先輩の話で顔がほころんでいた。唯先輩のことを話す憂はいつだって素敵な目をしている。そんな憂に、私が勝てる見込みはなかった。
だから、先週の電話のときーー
梓『憂』
憂『んー? どうしたの?』
梓『私、唯先輩のことが好き』
ついに、言ってしまった。言わなくても良かったのかもしれない。言わない方が良かったのかもしれない。それでも、もう私の気持ちを押し込めるのは無理だった。
23 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 19:44:34 ID:N7r
憂『…そっか』
憂ははぐらかすこともせず、柔らかい口調で答えた。その「好き」がどの「好き」なのかも分かっている。
梓『…ごめんね』
憂『う、ううん! 謝ることじゃないよ!!』
梓『…うん』
憂『ほら、怒るとかそういうんじゃなくて、それに、うん、分かってはいるつもりだったし』
少しの無言。いつも落ち着いた憂も、少しだけ声があたふたしてる。電話越しのノイズだけ聞こえ、私は毛布を被りながら言葉を考えていた。だけど、この沈黙を破ったのは憂だった。
憂『…お姉ちゃん、可愛いもんね』
梓『うん』
憂『ちょっとしっかりしてないところもあるけど』
梓『そうだね』
憂『でも、笑顔見たら明るくてこっちの気が抜けちゃうよね』
梓『うん』
憂ははぐらかすこともせず、柔らかい口調で答えた。その「好き」がどの「好き」なのかも分かっている。
梓『…ごめんね』
憂『う、ううん! 謝ることじゃないよ!!』
梓『…うん』
憂『ほら、怒るとかそういうんじゃなくて、それに、うん、分かってはいるつもりだったし』
少しの無言。いつも落ち着いた憂も、少しだけ声があたふたしてる。電話越しのノイズだけ聞こえ、私は毛布を被りながら言葉を考えていた。だけど、この沈黙を破ったのは憂だった。
憂『…お姉ちゃん、可愛いもんね』
梓『うん』
憂『ちょっとしっかりしてないところもあるけど』
梓『そうだね』
憂『でも、笑顔見たら明るくてこっちの気が抜けちゃうよね』
梓『うん』
24 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 19:45:28 ID:rB2
まともに乗っ取られてんの初めて見た
25 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 19:46:33 ID:N7r
憂『私も、お姉ちゃんのこと、大好きなんだ』
梓『…うん』
梓『…うん』
26 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 19:48:06 ID:TbS
珍しいやつもいるもんだな
ただ>>1はスレ乱立するな死ね
ただ>>1はスレ乱立するな死ね
27 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 19:55:38 ID:lzm
いいよいいよ~
28 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 19:58:10 ID:N7r
凛とした声。それだけ想いの強さが伝わってくる。近くにいる分、なおさらなのかもしれない。
私は枕を手繰り寄せ、ぼすっと顔から突っ込んだ。
梓『…ずるい』
憂『へ?』
梓『かっこいいもん』
そう言うと、電話の向こうで憂が照れたらしく、
憂『そ、そんな、言われたことないよぉ…』
と慌てて返した。反応がどことなく先輩に似てる気もする。
憂『梓ちゃんもかっこいいとこあるよ! ほら、あの…日焼けで真っ黒に焼けるとき!!』
梓『なんでそこなの!』
憂『え、ほら、なんかデキる女性っていうか、そんな感じ』
梓『うあーん!!』
好きで焼けやすいわけじゃない!
返すのも不毛だった。少し落ち着いてから、私は言葉を続けようとした。
梓『あの、ういーー』
憂『梓ちゃん』
遮ったのは、憂いだった。
私は枕を手繰り寄せ、ぼすっと顔から突っ込んだ。
梓『…ずるい』
憂『へ?』
梓『かっこいいもん』
そう言うと、電話の向こうで憂が照れたらしく、
憂『そ、そんな、言われたことないよぉ…』
と慌てて返した。反応がどことなく先輩に似てる気もする。
憂『梓ちゃんもかっこいいとこあるよ! ほら、あの…日焼けで真っ黒に焼けるとき!!』
梓『なんでそこなの!』
憂『え、ほら、なんかデキる女性っていうか、そんな感じ』
梓『うあーん!!』
好きで焼けやすいわけじゃない!
返すのも不毛だった。少し落ち着いてから、私は言葉を続けようとした。
梓『あの、ういーー』
憂『梓ちゃん』
遮ったのは、憂いだった。
29 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 20:06:24 ID:N7r
憂『あのね、私はお姉ちゃんが好き。だけど、そのことは私の中で、お姉ちゃんが卒業する前には区切りがついてたんだ』
私は言葉の続きを待つ。
憂『ほんとは、私がお姉ちゃんのことを好きになるなんて、変なことなんだと思う。血の繋がってる、しかも同性同士で。だけど、それも一つのカタチなんじゃないかなって思ってた』
憂『でも高校に入って、お姉ちゃん達と一緒にいる梓ちゃんを見て、はっと気付いたの。一番近くにいるのに、見たこともないお姉ちゃんがいたの。それがあるのは、梓ちゃん達といるからだって』
梓『……』
憂『私は羨ましかった。あんなに素敵なお姉ちゃんといる梓ちゃんが。それで梓ちゃんがお姉ちゃんのこと好きなのかなって気づいたら、そこでああ、負けちゃったって思った』
私は言葉の続きを待つ。
憂『ほんとは、私がお姉ちゃんのことを好きになるなんて、変なことなんだと思う。血の繋がってる、しかも同性同士で。だけど、それも一つのカタチなんじゃないかなって思ってた』
憂『でも高校に入って、お姉ちゃん達と一緒にいる梓ちゃんを見て、はっと気付いたの。一番近くにいるのに、見たこともないお姉ちゃんがいたの。それがあるのは、梓ちゃん達といるからだって』
梓『……』
憂『私は羨ましかった。あんなに素敵なお姉ちゃんといる梓ちゃんが。それで梓ちゃんがお姉ちゃんのこと好きなのかなって気づいたら、そこでああ、負けちゃったって思った』
30 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 20:11:39 ID:N7r
憂『だからね、私はお姉ちゃんのことが好きだけど、もっと相応しい人がいるんだって。それは梓ちゃんなんだよ。だから、応援してる。お姉ちゃんのこと、よろしくね』
それはとっても優しくて、気付けば私は涙をこぼしていた。憂の素直さが、たまらなく綺麗でーーどうしようもなく、かわいそうだった。
私はただ『ありがとう』と繰り返すだけだった。朝起きるころには電話は何時の間にか切れ、目はぱんぱんに腫れていた。
気持ちだけは、なにかが溶けた気がしていた。
それはとっても優しくて、気付けば私は涙をこぼしていた。憂の素直さが、たまらなく綺麗でーーどうしようもなく、かわいそうだった。
私はただ『ありがとう』と繰り返すだけだった。朝起きるころには電話は何時の間にか切れ、目はぱんぱんに腫れていた。
気持ちだけは、なにかが溶けた気がしていた。
34 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 21:10:08 ID:N7r
たびたびありがとう。きんぴらは正義。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
そうして、私はライバルと不戦勝のような決着をつけ、先輩と一緒にあの高校へ戻ってきた。幸いというかなんというか、さわちゃん先生は出張中だそうだ。まだ残ってるとは知らなかったけど。
事務員の人に入校証を貰い、私達の足は音楽室へ向かって行く。
唯「なんだか変わったねー」
梓「そうですね。先輩達がいたころより所々綺麗になってますね」
唯「おおっ、この部屋なんだろー?」
梓「あんまりいろんなとこ入っちゃだめですよ。授業もまだしてるかもしれないし」
雨は通り雨だったらしく、雲の切れ目から茜色の陽が射し込み始めた。私はこの高校でほんとに密度いっぱいの日々を送ってきたんだなぁ。広大な大学に押し込めるものがないだけだろうか。
唯「おー、ここは全然変わってないね」
先輩は音楽室の入口で立ち止まった。私の中では、わかばガールズの思い出も色濃く塗られてるこの場所。見慣れていたはずなのに、懐かしく感じる。
梓「授業もしてないですし、入りましょうか」
唯「よーし! おっはよー!!」
かけ声高く、先輩は中へ入っていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
そうして、私はライバルと不戦勝のような決着をつけ、先輩と一緒にあの高校へ戻ってきた。幸いというかなんというか、さわちゃん先生は出張中だそうだ。まだ残ってるとは知らなかったけど。
事務員の人に入校証を貰い、私達の足は音楽室へ向かって行く。
唯「なんだか変わったねー」
梓「そうですね。先輩達がいたころより所々綺麗になってますね」
唯「おおっ、この部屋なんだろー?」
梓「あんまりいろんなとこ入っちゃだめですよ。授業もまだしてるかもしれないし」
雨は通り雨だったらしく、雲の切れ目から茜色の陽が射し込み始めた。私はこの高校でほんとに密度いっぱいの日々を送ってきたんだなぁ。広大な大学に押し込めるものがないだけだろうか。
唯「おー、ここは全然変わってないね」
先輩は音楽室の入口で立ち止まった。私の中では、わかばガールズの思い出も色濃く塗られてるこの場所。見慣れていたはずなのに、懐かしく感じる。
梓「授業もしてないですし、入りましょうか」
唯「よーし! おっはよー!!」
かけ声高く、先輩は中へ入っていく。
35 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 21:23:56 ID:N7r
窓から透明の茜が染み込む。その景色は昔から、ずっとずっと変わらないものだ。ふっと視線を動かせば、律先輩がスティックを振り回してる。机に近づけば紬先輩の淹れた紅茶の香りがする。マイクスタンドを触れば、澪先輩が真っ直ぐ見据えて歌っている。
そして中心にはーー唯先輩がいる。
唯「懐かしいね」
梓「そうですね。ほんとに、懐かしいです」
私はこんな時間を待っていた。それは、決して思い出に優劣をつけるわけでは無いが、わかばガールズにいた時にも、あの時間を、あの瞬間を。
待っていたんだ。
梓「唯先輩」
私は手を後ろに組み、音楽室の中央で先輩を呼んだ。
そして中心にはーー唯先輩がいる。
唯「懐かしいね」
梓「そうですね。ほんとに、懐かしいです」
私はこんな時間を待っていた。それは、決して思い出に優劣をつけるわけでは無いが、わかばガールズにいた時にも、あの時間を、あの瞬間を。
待っていたんだ。
梓「唯先輩」
私は手を後ろに組み、音楽室の中央で先輩を呼んだ。
37 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 21:32:48 ID:N7r
梓「私と結婚しませんか…っ?」
38 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 21:52:47 ID:N7r
唯先輩は少し困ったような顔で私を見る。それでも、私は無理やり涙を抑えて続ける。
梓「私はっ…! 唯先輩のことが…好きなんです…! ほんとに…ほんとで…!!」
脚が震える。想いを伝えるのがこんなに苦しくて、切なくて、辛いなんて、初めて知った。
梓「私、頑張ります。絶対唯先輩のことを幸せにしてみせます。誰になんて言われたっていい! どう思われたっていいっ!!」
梓「だからっ…!!」
私は思わず先輩に抱きついた。そして無意識にぎゅっとしながら、
梓「もう二度とっ…私の前から離れないでください…!!」
涙が、溢れかえった。
梓「私はっ…! 唯先輩のことが…好きなんです…! ほんとに…ほんとで…!!」
脚が震える。想いを伝えるのがこんなに苦しくて、切なくて、辛いなんて、初めて知った。
梓「私、頑張ります。絶対唯先輩のことを幸せにしてみせます。誰になんて言われたっていい! どう思われたっていいっ!!」
梓「だからっ…!!」
私は思わず先輩に抱きついた。そして無意識にぎゅっとしながら、
梓「もう二度とっ…私の前から離れないでください…!!」
涙が、溢れかえった。
39 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 22:01:34 ID:N7r
もう嫌だ。もう先輩のいない後ろを追いかけたくなんかない。一緒に音楽をやってください。
私をもう一度魅了させてください。
言葉にならない想いが先輩のカーディガンに染み込んでいく。先輩は何も言わず、よしよしと私の背中をさすってくれていた。その優しさに甘えて、私はまだ涙が止まらなかった。
まるで生まれたての猫のように、わんわん泣いた。
私をもう一度魅了させてください。
言葉にならない想いが先輩のカーディガンに染み込んでいく。先輩は何も言わず、よしよしと私の背中をさすってくれていた。その優しさに甘えて、私はまだ涙が止まらなかった。
まるで生まれたての猫のように、わんわん泣いた。
42 :名無しさん@おーぷん :2015/02/10(火) 22:26:44 ID:N7r
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
唯「あーずーにゃん。落ち着いた?」
梓「はい…」
こんなにも泣いたのはいつ振りだろうか。体の水分が無くなってしまった気がする。
先輩はそっと頭を撫でてくれた。心地よい暖かさが気持ちよかった。
唯「ごめんね。気がつかなくて」
梓「いえ…先輩のせいじゃありません」
全ては私のわがままだ。子どもの癇癪と同じくらいの。
唯「結婚してくれるって言ってくれるの嬉しいよー。でも、あずにゃんとはもう少しこのままでいたいかな」
それが、先輩の答えなのだろう。きっとそう答える以外無いのかもしれない。それでも、私はその後を期待してしまう。
梓「…そうですね。私が焦ってただけみたいです」
私は先輩の体に身を預けてもたれかかった。私はほんとに結婚をしたかったのだろうか。うん、確かに結婚はしたい。
けど、本当に欲しかったのは、唯先輩がそばにいることだったんだ。
それに気がつかないでいたなんて、すっごく恥ずかしい。
唯「あずにゃんも大学入ったし、またみんなで放課後ティータイムやろうね。そうだ、今度は武道館でやろう!」
梓「いつの話になるんですか、それ」
遠い夢物語も、先輩となら今にも手が届きそうだ。私は先輩の胸に埋れた。
梓「…唯先輩」
唯「んー?」
梓「…もう少し、このままでいさせてください」
先輩はむふーと昔から変わらない表情をして、優しく頭を撫で続けてくれる。
結婚も…うん、いつかできるといいけどもーー今は、このままで。
梓「幸せですね、唯先輩」
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唯「あーずーにゃん。落ち着いた?」
梓「はい…」
こんなにも泣いたのはいつ振りだろうか。体の水分が無くなってしまった気がする。
先輩はそっと頭を撫でてくれた。心地よい暖かさが気持ちよかった。
唯「ごめんね。気がつかなくて」
梓「いえ…先輩のせいじゃありません」
全ては私のわがままだ。子どもの癇癪と同じくらいの。
唯「結婚してくれるって言ってくれるの嬉しいよー。でも、あずにゃんとはもう少しこのままでいたいかな」
それが、先輩の答えなのだろう。きっとそう答える以外無いのかもしれない。それでも、私はその後を期待してしまう。
梓「…そうですね。私が焦ってただけみたいです」
私は先輩の体に身を預けてもたれかかった。私はほんとに結婚をしたかったのだろうか。うん、確かに結婚はしたい。
けど、本当に欲しかったのは、唯先輩がそばにいることだったんだ。
それに気がつかないでいたなんて、すっごく恥ずかしい。
唯「あずにゃんも大学入ったし、またみんなで放課後ティータイムやろうね。そうだ、今度は武道館でやろう!」
梓「いつの話になるんですか、それ」
遠い夢物語も、先輩となら今にも手が届きそうだ。私は先輩の胸に埋れた。
梓「…唯先輩」
唯「んー?」
梓「…もう少し、このままでいさせてください」
先輩はむふーと昔から変わらない表情をして、優しく頭を撫で続けてくれる。
結婚も…うん、いつかできるといいけどもーー今は、このままで。
梓「幸せですね、唯先輩」
引用元:http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1423487115/