2017/08/11(金) 18:35:53

「おう、おはよう。……って、ゆかり今日はオフじゃなかったか?」
「はい。そうだったのですが……その、特に用事もありませんでしたので、つい」

荷物をソファに置き、自らも腰を下ろしながら、照れくさそうに微笑む。
仕草の一つ一つに育ちの良さが出る奥ゆかしさは、15歳とは到底思えない。


  2017/08/11(金) 18:36:04

「んー……つっても他の奴はレッスンだのなんだので今居ないから、ここに居ても暇だと思うぞ?」
「いえ、ここにいれば退屈ということはないですね。……あ、もしかしてご迷惑でしたか?」

心配そうにこちらを見る。
そんなことはない。むしろ退屈させてしまうのが申し訳ないところだ。
いや、ここにいれば退屈ではないと言うのなら、そうだとは思いたいが。
他に誰かが居たのならそれに越したことはないのだが、帰ってくるのはまだ先の話だ。


  2017/08/11(金) 18:36:13

「ゆかりが退屈じゃないってのなら問題ないさ。それに今ちひろさんも居ないし、華が欲しかったところだ」
「そうですか。……ふふっ」

嬉しそうな笑顔。
こういうところは年相応というか、可愛らしい女の子と言うか。
こういうギャップが彼女のいいところだろう。


  2017/08/11(金) 18:36:20

「それじゃあ、俺は仕事に戻るから。何かあったら言ってくれ」
「はい。お疲れ様です、プロデューサー」

このままゆかりと話し続けるというのは魅力的だが、やらなくてはいけないことがある以上やらねばなるまい。
視線を作成途中の企画書に戻す。
彩りの増えた打鍵音だけの空間は、なんとなくいつもより作業が捗った。


  2017/08/11(金) 18:36:41

―――
――


時折感じるゆかりの視線を気にせず作業に没頭していると、いつの間にかその視線は感じなくなっていた。
ゆかりが何をしているのか気にはなったが、雑念を振り払い作業を進める。
そういうのはこれが終わってからだと言い聞かせ、企画書を仕上げていった。

モバP「――……くぁ……ふぅ。一段落……っと」

二時間ほど経っただろうか。気がつけば小腹が空いていた。
時計を改めてみると、針は十二時を指している。


  2017/08/11(金) 18:36:54

背伸びをすると小気味いい音色と心地よい開放感が、縮こまった体をほぐしていく。
整体とか行ったほうがいいのかなと思いつつ、簡単なストレッチを続けていると、ソファにふと目が行った。

視線を感じなくなった理由は明白だった。
安らかな寝息を立てて、ゆかりは気持ちよさそうに眠っていた。

やっぱり暇になったんじゃないかと呆れながら、ソファに近づく。
無防備に眠りこける彼女の表情はとても穏やかで、信頼されてるなぁなんてしみじみ思う。


  2017/08/11(金) 18:37:08

「おーい、ゆかりさんや。そんなところで寝てると風邪引くぞー」

しかし、非常に心苦しいが起こさねばなるまい。
風邪でも引かれると困るし、なによりソファなんかで寝ていたら体を痛めてしまう。
……我ながら酷いブーメランだとは思うが、それはそれ。これはこれ。
プロデューサーとして、アイドルの体調管理に気を使うのは当たり前だろう。


  2017/08/11(金) 18:37:29

「――ん……ぅ……」

しかし起きない。
まいった。ゆかりがここまでねぼすけだとは思わなかったぞ。
……どうやら、声をかけるだけでは駄目のようだ。

「おーい、ゆかりー。起きろー……お?」

肩をゆすろうと手を伸ばしたところでゆかりの目が薄く開いた。
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10   2017/08/11(金) 18:37:41

「……はれ……ぷろでゅーさー……さん?」

呂律の回らない声。
いつもの澄んだ声とは違う、無防備な少女の声に思わずドキリとする。
なんだかいけないことをしてしまったかのような焦燥感が身を焦がす。
実際の所とくにやましいことなどしていないので焦る必要などないのだが、身動きが何故か取れなかった。


11   2017/08/11(金) 18:37:55

「…………んー」

そんな俺を気にすることなくゆかりは。

「ち、ちょ!? ゆかり!?」

なぜか、俺に、抱きついてきた。


12   2017/08/11(金) 18:38:08

「んー……ぷろでゅーさーさーん……」

首の後に巻かた腕で抱きしめられる形になり、ゆかりの顔がちょうど俺の顔の真横にある。
甘えるような声色が耳をくすぐり、思わず変な声が出そうになる。

「……えへー……」

そして、寝惚けゆかりんは相当フリーダムなようで、肩に頬ずりしながら抱きしめる腕の力を強めてきた。
流石にそこで吹き飛んだ思考が一気に戻る。
自分の担当アイドル……それも未成年の女の子とこんなことになっている状況は果てしなくヤバい。



13   2017/08/11(金) 18:38:31

「お、おい! ゆかり! 起きろ! 起きなさい!」
「……すぅ……」
「マジか。このタイミングで寝おったぞこやつ……!」

どうやらこのお嬢様は一筋縄ではいかないようで。
寝惚けの次元を通り越している気がしないでもないが、気持ちよさそうな寝息を聞いていると怒る気が失せてくる。
我ながら甘いなぁと思うが、可愛い女の子に寝惚けて入るが甘えられて嬉しくない訳がないのが本音なので、こればかりは仕方がない。


14   2017/08/11(金) 18:38:53

「……はぁー……。……しょうがないな」

首に腕を回されているのが幸いした。
このままゆかりを抱き上げ、所謂お姫様抱っこの状態にする。
起きないのなら、あのままソファで寝かせるより仮眠室に連れてったほうがいい。
なにより、ゆかりの腕が離れそうにないので、こうやって運んだほうが怪しまれずに済むというものだ。


15   2017/08/11(金) 18:39:03

「……ったく、今回だけだからなー?」

落とさないように、壊れないように。
大切に抱き上げた少女に声をかける。

気のせいか、首に絡められた腕の力が少しだけ、強くなった気がした。


引用元:http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1502444141/