1 2018/04/12(木) 20:03:59
飛鳥「自分を曝け出すのはとても勇気のいることだと、最近改めて思うようになったよ」
飛鳥「特に、偶像なんてものをやっていると、ね」
飛鳥「本当の自分を他人に見せるのは怖い。自分の弱みを見せているようなものだからね」
飛鳥「この冷たく孤独なセカイでは、誰しも強がっていないといけないんだ」
飛鳥「それが、自然の摂理というものなのだから」
飛鳥「けれど、本当の自分を誰かに見てもらいたい。そう思うことに罪は無いはずだ。キミもそう思うだろう?」
日記「………………」
飛鳥「特に、偶像なんてものをやっていると、ね」
飛鳥「本当の自分を他人に見せるのは怖い。自分の弱みを見せているようなものだからね」
飛鳥「この冷たく孤独なセカイでは、誰しも強がっていないといけないんだ」
飛鳥「それが、自然の摂理というものなのだから」
飛鳥「けれど、本当の自分を誰かに見てもらいたい。そう思うことに罪は無いはずだ。キミもそう思うだろう?」
日記「………………」
2 2018/04/12(木) 20:06:16
飛鳥「……さて、そろそろ本題に入ろう」
飛鳥「目の前にあるのは何の変哲もない日記帳だ。表紙に大きく『日記帳』と書いてあるのだから、これは間違いなく日記帳だ」
飛鳥「ああ、先に言っておくと、これはボクのものじゃない」
飛鳥「ついさっきのことだ。ボクが忘れ物を取りに事務所に戻ってみると、机の上にこの日記帳が置いてあった」
飛鳥「瞬時に思ったね、これは罠だと。それも、巧妙に仕掛けられた罠だってね」
飛鳥「目の前にあるのは何の変哲もない日記帳だ。表紙に大きく『日記帳』と書いてあるのだから、これは間違いなく日記帳だ」
飛鳥「ああ、先に言っておくと、これはボクのものじゃない」
飛鳥「ついさっきのことだ。ボクが忘れ物を取りに事務所に戻ってみると、机の上にこの日記帳が置いてあった」
飛鳥「瞬時に思ったね、これは罠だと。それも、巧妙に仕掛けられた罠だってね」
3 2018/04/12(木) 20:08:05
飛鳥「どこかの誰かが事務所に日記を置き忘れた。ああ、確かにそう考えるのが普通かもしれない」
飛鳥「けど、考えてみると良い。事務所に日記帳を忘れて帰るなんていうシチュエーションが、この世にあり得るのか? とね」
飛鳥「日記というのは、自己との対話だ。誰にも見せていない自分を書き綴るためのツールだ」
飛鳥「言って仕舞えば、日記帳というのは本当の自分の写し絵だ」
飛鳥「そんなものを、外に持ち出す人が本当にいると思うかい?」
日記「………………」
飛鳥「けど、考えてみると良い。事務所に日記帳を忘れて帰るなんていうシチュエーションが、この世にあり得るのか? とね」
飛鳥「日記というのは、自己との対話だ。誰にも見せていない自分を書き綴るためのツールだ」
飛鳥「言って仕舞えば、日記帳というのは本当の自分の写し絵だ」
飛鳥「そんなものを、外に持ち出す人が本当にいると思うかい?」
日記「………………」
4 2018/04/12(木) 20:11:23
飛鳥「ボク以外誰もいない事務所、そして置き忘れられた日記帳」
飛鳥「まるで、『飛鳥さんどうぞ私の日記をみてください』と言わんばかりのこのシチュエーションじゃないか。ああ、これはまさしく罠だよ」
飛鳥「好奇心は猫をも殺すというが……はてさて」
飛鳥「………………」
飛鳥「人の真価とは、何をするべきかわからない時に、何をすべきかわかるかどうかで決まるものらしい」
飛鳥「そして、箱の中の猫が生きているのか死んでいるのかを知りたいのなら、出来ることは限られてくる」
飛鳥「つまりだ、ボクのやるべきことは一つというわけだ」
ペラッ
日記「今日から、日記をつけることにしました。大事なことだと思うんです、日記をつけるのって」
飛鳥「……」
飛鳥「…………」
飛鳥「………………」
飛鳥「……書き出しから痛いな」
飛鳥「まるで、『飛鳥さんどうぞ私の日記をみてください』と言わんばかりのこのシチュエーションじゃないか。ああ、これはまさしく罠だよ」
飛鳥「好奇心は猫をも殺すというが……はてさて」
飛鳥「………………」
飛鳥「人の真価とは、何をするべきかわからない時に、何をすべきかわかるかどうかで決まるものらしい」
飛鳥「そして、箱の中の猫が生きているのか死んでいるのかを知りたいのなら、出来ることは限られてくる」
飛鳥「つまりだ、ボクのやるべきことは一つというわけだ」
ペラッ
日記「今日から、日記をつけることにしました。大事なことだと思うんです、日記をつけるのって」
飛鳥「……」
飛鳥「…………」
飛鳥「………………」
飛鳥「……書き出しから痛いな」
5 2018/04/12(木) 20:16:17
飛鳥「まあ良い、続きだ続き」
日記「だって、気持ちって書いて残しておかないと、忘れてしまうじゃないですか」
日記「その日何を考えていたか。その日何を思っていたか」
日記「そういう事を書き残すのって大事なことだと思うんです」
日記「特に、私のような年頃の女の子は。だって、思っていることが毎日変わっていくのですから」
飛鳥「痛い!」
飛鳥「なんだこの文章は! ボクもボク自身をそこそこ痛いヤツだと認識してはいるけれど、これは群を抜いてるぞ!」
日記「だって、気持ちって書いて残しておかないと、忘れてしまうじゃないですか」
日記「その日何を考えていたか。その日何を思っていたか」
日記「そういう事を書き残すのって大事なことだと思うんです」
日記「特に、私のような年頃の女の子は。だって、思っていることが毎日変わっていくのですから」
飛鳥「痛い!」
飛鳥「なんだこの文章は! ボクもボク自身をそこそこ痛いヤツだと認識してはいるけれど、これは群を抜いてるぞ!」
6 2018/04/12(木) 20:16:37
日記「ふふ……なんだかとっても変な気分です」
日記「実を言うと、日記を書くのって初めてなんです」
日記「いえ、本当は何度か書いたことはありますよ?」
日記「でも、書いたものはいつも、こう、何て言えばいいのでしょう」
日記「論文調……? というのが近いのでしょうか。ええ、そうですね。論文調。日記ではなかったんです」
日記「だから、これが人生初めての日記なんです」
飛鳥「何をどうやったら日記が論文調になるんだ……」
飛鳥「というか何でこの日記、誰かが読む前提の文体で……。こういうのが余計に痛いんだ」
日記「あ、すみません。自己紹介を忘れていました」
飛鳥「やかましいよ、日記で自己紹介ってなんだ」
日記「……ちなみに、私は誰だと思いますか?」
飛鳥「わかるか」
日記「ジャック・バウアーじゃないですよ?」
飛鳥「一言も言ってないよ」
日記「私の名前は、ありす」
日記「実を言うと、日記を書くのって初めてなんです」
日記「いえ、本当は何度か書いたことはありますよ?」
日記「でも、書いたものはいつも、こう、何て言えばいいのでしょう」
日記「論文調……? というのが近いのでしょうか。ええ、そうですね。論文調。日記ではなかったんです」
日記「だから、これが人生初めての日記なんです」
飛鳥「何をどうやったら日記が論文調になるんだ……」
飛鳥「というか何でこの日記、誰かが読む前提の文体で……。こういうのが余計に痛いんだ」
日記「あ、すみません。自己紹介を忘れていました」
飛鳥「やかましいよ、日記で自己紹介ってなんだ」
日記「……ちなみに、私は誰だと思いますか?」
飛鳥「わかるか」
日記「ジャック・バウアーじゃないですよ?」
飛鳥「一言も言ってないよ」
日記「私の名前は、ありす」
7 2018/04/12(木) 20:16:57
飛鳥「………………」
飛鳥「………………」
飛鳥「……ありす?」
飛鳥「……あの、ありす? A.Tachibanaのありす?」
日記「不思議な名前でしょう?」
日記「私もそう思います」
日記「おとぎ話に出てきそうな名前ですよね」
飛鳥「………………」
飛鳥「……ありす?」
飛鳥「……あの、ありす? A.Tachibanaのありす?」
日記「不思議な名前でしょう?」
日記「私もそう思います」
日記「おとぎ話に出てきそうな名前ですよね」
8 2018/04/12(木) 20:17:35
飛鳥「………………」
飛鳥「………………」
飛鳥「…………あっ」
飛鳥「これ、読んだらマズっ……」
日記「でも、両親がつけてくれた大切な名前です。だから私は、この名前が大好きです」
飛鳥「ギィ……!」
日記「まあ、外国人と間違えられやすいのが玉に瑕ですけど」
飛鳥「くぅぅ!」
日記「あとあと、かわいすぎるニュアンスなのも」
飛鳥「ふーッ! ふーッ!」
飛鳥「……エクステがなければ即死だった」
飛鳥「……なんだこの、見る人を身悶えさせる内容は。ギャップ萌えで殺す気か」
飛鳥「まあいい、この際だ。最後まで読んでしまおう」
ペラッ。
日記「BeHinD yOU.┓┏.」
飛鳥「………………」
飛鳥「…………あっ」
飛鳥「これ、読んだらマズっ……」
日記「でも、両親がつけてくれた大切な名前です。だから私は、この名前が大好きです」
飛鳥「ギィ……!」
日記「まあ、外国人と間違えられやすいのが玉に瑕ですけど」
飛鳥「くぅぅ!」
日記「あとあと、かわいすぎるニュアンスなのも」
飛鳥「ふーッ! ふーッ!」
飛鳥「……エクステがなければ即死だった」
飛鳥「……なんだこの、見る人を身悶えさせる内容は。ギャップ萌えで殺す気か」
飛鳥「まあいい、この際だ。最後まで読んでしまおう」
ペラッ。
日記「BeHinD yOU.┓┏.」
9 2018/04/12(木) 20:17:50
瞬間、二宮飛鳥は弾けるように振り返った。
そこには、橘ありすの姿があった。だが、その様子はいつもの大人ぶる少女のそれとは異なっていた。
「見ましたね」
瞳からハイライトが失せたその様子、見る人全てがぎょっとすること間違いなし。
死期を悟った飛鳥は静かに十字を切った後、こう呟いた。
「ありす、安心してくれ。僕も、君の名前が好きだよ」
「ピイィィィィィ!」
おしまい
そこには、橘ありすの姿があった。だが、その様子はいつもの大人ぶる少女のそれとは異なっていた。
「見ましたね」
瞳からハイライトが失せたその様子、見る人全てがぎょっとすること間違いなし。
死期を悟った飛鳥は静かに十字を切った後、こう呟いた。
「ありす、安心してくれ。僕も、君の名前が好きだよ」
「ピイィィィィィ!」
おしまい
引用元:http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1523531039/