112 ◆ 2018/09/19(水) 20:01:30
「全くでち。デリカシーに欠けてるでち。そもそも、ネタにされるようなことをされるのが良くないんでち」
ゴーヤはカステラを放り込み、お茶でそれを流し込んだ。
「……くっ、痛いところを……止める条件は?」
「そうでありますなあ……まあそもそも事実ですから止める理由はないでありますが。自分のお願いを聞いてくれるなら、取り消してもいいであります」
「お願い?」
コクン、とあきつ丸が頷いた。
「旨いものが食いたいであります。あまりコッテリしたものではなく、さらっと食えるのがいいであります。
陸軍も陸自も、贅沢をよしとしない文化であります。簡素、かつ奥が深いものでありますな」
「さらっと、なあ……お茶漬けか?」
「まあそれでもいいのでありますが。それではあまり芸がないでありますからなあ……。塩ラーメンなど、どうでありますか」
パン、とゴーヤが両の掌を合わせた。
「それいいでち!『全国利き塩選手権』優勝の提督なら、いいとこ知ってるはずでち!」
「だからそんな大会知らんぞ俺は……。だが塩か。うーむ」
俺は腕を組んだ。これは難題だ。
ゴーヤはカステラを放り込み、お茶でそれを流し込んだ。
「……くっ、痛いところを……止める条件は?」
「そうでありますなあ……まあそもそも事実ですから止める理由はないでありますが。自分のお願いを聞いてくれるなら、取り消してもいいであります」
「お願い?」
コクン、とあきつ丸が頷いた。
「旨いものが食いたいであります。あまりコッテリしたものではなく、さらっと食えるのがいいであります。
陸軍も陸自も、贅沢をよしとしない文化であります。簡素、かつ奥が深いものでありますな」
「さらっと、なあ……お茶漬けか?」
「まあそれでもいいのでありますが。それではあまり芸がないでありますからなあ……。塩ラーメンなど、どうでありますか」
パン、とゴーヤが両の掌を合わせた。
「それいいでち!『全国利き塩選手権』優勝の提督なら、いいとこ知ってるはずでち!」
「だからそんな大会知らんぞ俺は……。だが塩か。うーむ」
俺は腕を組んだ。これは難題だ。
113 ◆ 2018/09/19(水) 20:15:32
「どうしたんでちか?難しい顔をして」
「塩はシンプルだ。だからそれこそバリエーションも多彩なんだよ。そして、誤魔化しも利きにくい。
だから店選びが実は結構難しいんだな。星の数ほどある塩の店の中で選ぶとなると……」
そう。塩はラーメンの基礎にして極致だ。醤油以上に、店の個性が出る。
無論、旨い店はそれなりに知ってる。だが「知りすぎている」が故に絞り込めない。こいつは困ったぞ。
1 塩はやはりシンプルさが命。上野に行くか
2 ミシュランも唸る塩の最先端。秋葉原こそ塩の聖地だ
3 鮮魚系塩といえばここが元祖。新宿で一勝負だ
4 あきつ丸の言うことは全て無視だ。二郎系塩を食わせてやる
※3票先取です。
「塩はシンプルだ。だからそれこそバリエーションも多彩なんだよ。そして、誤魔化しも利きにくい。
だから店選びが実は結構難しいんだな。星の数ほどある塩の店の中で選ぶとなると……」
そう。塩はラーメンの基礎にして極致だ。醤油以上に、店の個性が出る。
無論、旨い店はそれなりに知ってる。だが「知りすぎている」が故に絞り込めない。こいつは困ったぞ。
1 塩はやはりシンプルさが命。上野に行くか
2 ミシュランも唸る塩の最先端。秋葉原こそ塩の聖地だ
3 鮮魚系塩といえばここが元祖。新宿で一勝負だ
4 あきつ丸の言うことは全て無視だ。二郎系塩を食わせてやる
※3票先取です。
114 2018/09/19(水) 20:15:57
4でw
115 2018/09/19(水) 20:19:53
1
116 2018/09/19(水) 20:21:48
1
118 2018/09/19(水) 20:24:14
1
120 ◆ 2018/09/19(水) 20:25:27
第3話 大喜
121 ◆ 2018/09/19(水) 20:27:01
ちょっと休憩します。
その他は
2 饗 くろき
3 海神
4 豚星。
でした。(一度選択肢に出ても、再登場の機会はあります)
その他は
2 饗 くろき
3 海神
4 豚星。
でした。(一度選択肢に出ても、再登場の機会はあります)
123 ◆ 2018/09/19(水) 23:04:40
「……よし、決めた。無難に端麗系にしよう」
「端麗系?ビールみたいなことを言うのですな」
「まあシンプルかつ上品という意味だな。お前のリクエストに応えてやる。今から行くとちょうど晩飯時だな」
場所は上野。時間はかかるが、乗り換えは楽だ。上野か……久々だな。
※コンマ下の!randomが50以下で提督やらかす
「端麗系?ビールみたいなことを言うのですな」
「まあシンプルかつ上品という意味だな。お前のリクエストに応えてやる。今から行くとちょうど晩飯時だな」
場所は上野。時間はかかるが、乗り換えは楽だ。上野か……久々だな。
※コンマ下の!randomが50以下で提督やらかす
124 2018/09/19(水) 23:04:55
ほい
125 ◆ 2018/09/19(水) 23:22:34
#
「げっ……ない」
俺は自分の目を疑った。湯島天神の坂の下。そこにあるはずの店が……ない。
「提督殿、自信満々で来たら店がないとは笑止でありますな」
「そうでち。上野から結構歩いたのに無駄だったでち。潰れたとか言ったら怒るでちよ?」
ゴーヤとあきつ丸から冷たい視線が突き刺さる。こんなはずでは。
「いや、数年前に来た時はここにあったんだよ。……うわ、マジか」
冷や汗を流しながらスマホを弄ると、目当ての店は御徒町に去年移転していたらしい。……やっちまった。
「すまん、引っ越ししてた。しゃあないからタクシーで行くぞ。……とほほ」
「全く、情けないでありますな。これでイマイチだったら、約束はなかったことにするであります」
俺は肩を落とし、タクシーを探した。飲み屋とラブホ街が近いから、すぐに見つかるだろう。
……ん?
※ゲスト艦娘追加です。その前にシチュエーションを決めます。
コンマ下の!randomが
00~05 ???(自由安価)
06~60 飲み屋に行こうとしている(2人)
61~80 飲み屋を梯子しようとしている(2人)
81~98 デート中(1人)
99、100 デート中(2人)
「げっ……ない」
俺は自分の目を疑った。湯島天神の坂の下。そこにあるはずの店が……ない。
「提督殿、自信満々で来たら店がないとは笑止でありますな」
「そうでち。上野から結構歩いたのに無駄だったでち。潰れたとか言ったら怒るでちよ?」
ゴーヤとあきつ丸から冷たい視線が突き刺さる。こんなはずでは。
「いや、数年前に来た時はここにあったんだよ。……うわ、マジか」
冷や汗を流しながらスマホを弄ると、目当ての店は御徒町に去年移転していたらしい。……やっちまった。
「すまん、引っ越ししてた。しゃあないからタクシーで行くぞ。……とほほ」
「全く、情けないでありますな。これでイマイチだったら、約束はなかったことにするであります」
俺は肩を落とし、タクシーを探した。飲み屋とラブホ街が近いから、すぐに見つかるだろう。
……ん?
※ゲスト艦娘追加です。その前にシチュエーションを決めます。
コンマ下の!randomが
00~05 ???(自由安価)
06~60 飲み屋に行こうとしている(2人)
61~80 飲み屋を梯子しようとしている(2人)
81~98 デート中(1人)
99、100 デート中(2人)
126 2018/09/19(水) 23:24:39
どうかな?
127 ◆ 2018/09/19(水) 23:27:31
※飲み屋を梯子しようとしている2人組
安価下1~3で!randomが最も大きいものにします。
飲んでそうな2人組を指定してください。
(なお、湯島近辺は安い飲み屋だけでなく、呑兵衛御用達のスペシャルなバーも複数あります。ご参考に)
安価下1~3で!randomが最も大きいものにします。
飲んでそうな2人組を指定してください。
(なお、湯島近辺は安い飲み屋だけでなく、呑兵衛御用達のスペシャルなバーも複数あります。ご参考に)
128 2018/09/19(水) 23:28:33
足柄、羽黒
129 2018/09/19(水) 23:29:52
那智、隼鷹
130 2018/09/19(水) 23:31:11
千歳と雲龍
132 ◆ 2018/09/19(水) 23:35:13
これは……w
同コンマのため、コンマ下で決めます。
00~33 足柄と羽黒
34~66 那智と隼鷹
67~99 4人全員
100 ゲスト艦娘さらに追加
同コンマのため、コンマ下で決めます。
00~33 足柄と羽黒
34~66 那智と隼鷹
67~99 4人全員
100 ゲスト艦娘さらに追加
133 2018/09/19(水) 23:35:55
あ
138 ◆ 2018/09/20(木) 09:11:19
昼から再開しますが、判定を!randomで行います。コンマ下です。
00~95 餓狼、悲しみの咆哮
96~100 餓狼、勝利の咆哮
00~95 餓狼、悲しみの咆哮
96~100 餓狼、勝利の咆哮
139 2018/09/20(木) 09:15:13
えい
141 ◆ 2018/09/20(木) 13:11:21
バーが並ぶ路地から二人の女がフラフラと歩いて出てきた。いや、泥酔しているのは片方だけで、もう一人が肩を貸している感じか。
まだ19時過ぎというのに随分なもんだな……ん??
「ちょっと待てよ、あれは……?」
よそ行きのドレスを着ちゃいるが、間違いない。ありゃうちの足柄と羽黒だ。
他の鎮守府の同型艦かと思ったが、どうにもそうじゃないな。あんなに泣き上戸なのは、そういるもんじゃない。
「はーぐーろ"ぉー……私のどごがわる"い"のよぉ……」
「姉さんには姉さんのいいところがありますよ。分かってくれる人も、きっといますって。……ほら、帰りますよ。……あっ」
羽黒がこちらに気付いて固まった。
「あっ、あの!あの、司令官さんっ、人違いですっ」
「いきなり人違い言うとは、正体ばらしてるようなもんじゃねえかよ……」
「いえっ、あのっ、これは……」
足柄が俺に気付いた。フラフラになりながら駆け寄ってくる。
「でーどぐー……!わだしね、まだかでながった……ううっ、えぐっ……うぷ」
「だーっ、吐くな!そこで吐くな!ていうか何でてめーら上野にいるんだよ!」
羽黒は涙目になりながら、ひたすら頭を下げた。
「ごめんなさい!だから、あのっ……とにかくごめんなさい!
「謝ってばかりじゃ何言いたいか分からんでち。まあ予想はできるでちが」
ゴーヤが半笑いのあきつ丸を見る。
「その格好、結婚式帰りでありますな。大方二次会での逆ナンに失敗して、自棄酒飲んだって辺りでありましょう」
「そうよ!だから何よ!私のこのしなやかで精悍な肉体!美しい獣のごときルックス!なのに何で男は私を選ばないのよー!あーむかつく!!」
「どうせまた豚カツ推しが過ぎて男がドン引きしたんでありましょうな。だからいかんのです、足柄殿」
「何ですってー!?あんたに言われたくないわ陸軍のへんた……うぷぷっ」
俺は具合が悪そうな足柄を路肩へと引っ張り、吐かせてやった。あきつ丸にもしゲロをかけたら、120%血の海になる。
まだ19時過ぎというのに随分なもんだな……ん??
「ちょっと待てよ、あれは……?」
よそ行きのドレスを着ちゃいるが、間違いない。ありゃうちの足柄と羽黒だ。
他の鎮守府の同型艦かと思ったが、どうにもそうじゃないな。あんなに泣き上戸なのは、そういるもんじゃない。
「はーぐーろ"ぉー……私のどごがわる"い"のよぉ……」
「姉さんには姉さんのいいところがありますよ。分かってくれる人も、きっといますって。……ほら、帰りますよ。……あっ」
羽黒がこちらに気付いて固まった。
「あっ、あの!あの、司令官さんっ、人違いですっ」
「いきなり人違い言うとは、正体ばらしてるようなもんじゃねえかよ……」
「いえっ、あのっ、これは……」
足柄が俺に気付いた。フラフラになりながら駆け寄ってくる。
「でーどぐー……!わだしね、まだかでながった……ううっ、えぐっ……うぷ」
「だーっ、吐くな!そこで吐くな!ていうか何でてめーら上野にいるんだよ!」
羽黒は涙目になりながら、ひたすら頭を下げた。
「ごめんなさい!だから、あのっ……とにかくごめんなさい!
「謝ってばかりじゃ何言いたいか分からんでち。まあ予想はできるでちが」
ゴーヤが半笑いのあきつ丸を見る。
「その格好、結婚式帰りでありますな。大方二次会での逆ナンに失敗して、自棄酒飲んだって辺りでありましょう」
「そうよ!だから何よ!私のこのしなやかで精悍な肉体!美しい獣のごときルックス!なのに何で男は私を選ばないのよー!あーむかつく!!」
「どうせまた豚カツ推しが過ぎて男がドン引きしたんでありましょうな。だからいかんのです、足柄殿」
「何ですってー!?あんたに言われたくないわ陸軍のへんた……うぷぷっ」
俺は具合が悪そうな足柄を路肩へと引っ張り、吐かせてやった。あきつ丸にもしゲロをかけたら、120%血の海になる。
142 ◆ 2018/09/20(木) 17:32:24
#
「落ち着いたか」
「……ごめんなさい、提督。私としたことが」
「まあお前が男絡みで飲んで取り乱すのは、今に始まった話じゃねえからな。俺に比べりゃまだ大分若いんだから、焦る必要もないだろうに」
一通り吐いて息が整ったか、足柄が申し訳なさそうにうつむいている。
「そうですよ、姉さん。あのっ、司令官さん、ごめんなさい」
「いや、いい。しっかし何で湯島にいたんだか。結婚式帰りって言っても、この辺りに式場なんてあったかね」
「えっ、あの、実は……那智姉さんがいつも連れていってくれるお店があるんですけど、どこか分からなくて。そうしたら、足柄姉さんが『どこでもいいから飲みたい』って……」
ゴーヤが溜め息をついた。
「羽黒さんは大変でちね。ダメな大人の世話は苦労するでち。今度お昼のお茶会に招待するでち。スッキリするでちよ」
「そうであります。辛いことは吐き出すがいいであります。自分もそうやってたのし……いや元気付けられているのであります」
俺は後ろの二人を一瞥した。
「問題児二人が優等生の羽黒を悪の道に引きずり込もうとしてるが……無視しろ、無視。
それはさておいて、那智が行きつけの店は何という店だ?」
「えっと……『EST』ってとこですけど」
※下の!randomが40以上で提督も知っている
「落ち着いたか」
「……ごめんなさい、提督。私としたことが」
「まあお前が男絡みで飲んで取り乱すのは、今に始まった話じゃねえからな。俺に比べりゃまだ大分若いんだから、焦る必要もないだろうに」
一通り吐いて息が整ったか、足柄が申し訳なさそうにうつむいている。
「そうですよ、姉さん。あのっ、司令官さん、ごめんなさい」
「いや、いい。しっかし何で湯島にいたんだか。結婚式帰りって言っても、この辺りに式場なんてあったかね」
「えっ、あの、実は……那智姉さんがいつも連れていってくれるお店があるんですけど、どこか分からなくて。そうしたら、足柄姉さんが『どこでもいいから飲みたい』って……」
ゴーヤが溜め息をついた。
「羽黒さんは大変でちね。ダメな大人の世話は苦労するでち。今度お昼のお茶会に招待するでち。スッキリするでちよ」
「そうであります。辛いことは吐き出すがいいであります。自分もそうやってたのし……いや元気付けられているのであります」
俺は後ろの二人を一瞥した。
「問題児二人が優等生の羽黒を悪の道に引きずり込もうとしてるが……無視しろ、無視。
それはさておいて、那智が行きつけの店は何という店だ?」
「えっと……『EST』ってとこですけど」
※下の!randomが40以上で提督も知っている
143 2018/09/20(木) 17:33:41
ぽい
144 ◆ 2018/09/20(木) 17:46:57
※知っている
「マジか。流石だな」
ゴーヤが俺を見た。
「知ってるでちか?」
「無論。日本のオーセンティックバーの頂点にあると言っても過言じゃない。
もうマスターは80近いはずだが、腕は健在。とにかく全てのカクテルに仕事がしてある。
ただ、メニューはないし、お高い。あと、フードもない。本当に酒飲みが最高の酒を飲むために行くような店だな」
「ほう、何か凄そうな店でありますな……とはいえ、目的はラーメンであります。迷いますなぁ」
「目的の店は飲みの締めにはピッタリだったんだよ。あっさりして滋味がある。どうするよ」
ゴーヤは少し考えてから口を開いた。
「今回はやめとくでち。そもそもゴーヤ、そんなに飲めないし」
「陸軍……じゃなかった自分としては賛成でありますな。そこまで言うカクテルとは何か、気になるであります」
あきつ丸は乗り気のようだ。
「お前らは?」
「あのっ、せっかくですし、行きたいなって……姉さんは?」
「私はパスしたいわね……安酒なんざ飲むんじゃなかったわ」
こちらも意見が割れた。さあて、どうすっかな。
※安価下1~3で多数決します。
「マジか。流石だな」
ゴーヤが俺を見た。
「知ってるでちか?」
「無論。日本のオーセンティックバーの頂点にあると言っても過言じゃない。
もうマスターは80近いはずだが、腕は健在。とにかく全てのカクテルに仕事がしてある。
ただ、メニューはないし、お高い。あと、フードもない。本当に酒飲みが最高の酒を飲むために行くような店だな」
「ほう、何か凄そうな店でありますな……とはいえ、目的はラーメンであります。迷いますなぁ」
「目的の店は飲みの締めにはピッタリだったんだよ。あっさりして滋味がある。どうするよ」
ゴーヤは少し考えてから口を開いた。
「今回はやめとくでち。そもそもゴーヤ、そんなに飲めないし」
「陸軍……じゃなかった自分としては賛成でありますな。そこまで言うカクテルとは何か、気になるであります」
あきつ丸は乗り気のようだ。
「お前らは?」
「あのっ、せっかくですし、行きたいなって……姉さんは?」
「私はパスしたいわね……安酒なんざ飲むんじゃなかったわ」
こちらも意見が割れた。さあて、どうすっかな。
※安価下1~3で多数決します。
145 2018/09/20(木) 17:49:01
行く
146 2018/09/20(木) 17:50:13
ESTに行ってみる
147 ◆ 2018/09/20(木) 17:53:25
第3.5話 EST
148 ◆ 2018/09/20(木) 17:55:12
ラーメンではないですが、少しだけ。
大喜の開店時間的に多分1杯飲んだら撤収でしょうが……
大喜の開店時間的に多分1杯飲んだら撤収でしょうが……
151 ◆ 2018/09/20(木) 22:12:41
「じゃあ行ってみるか。……金あるかな」
一応相応の給料は貰っているが、何せ高い。まあ、時間的にもそんな飲まないだろうからいいか。
「本当でありますか!いやあ、提督殿は太っ腹でありますなあ」
「その代わり、約束は守れよ。いいな」
「承ったであります」
あきつ丸は満足げだ。しかし言葉半分に聞いておこう。
「ていうか、お前ら店に気付かなかったのか。すぐそこだよ」
俺は足柄たちが出てきた路地の入り口を指差した。木の看板に「EST!EST!EST!」とある。
「あ、本当です……あの、姉さん、ごめんなさい」
羽黒が涙目になって謝る。俺はまあまあとなだめた。
「まあ見付けにくいしな。そもそもどこから入ればいいか分からんだろ。ほれ」
ドアは通りに直接面しておらず、少し隠れた位置にある。しかもこのドアがやたらと重厚で威圧感がある。一見で抵抗感なく入れたら、そいつはかなりの剛の者だ。
俺はそれを押し、店内に入った。
一応相応の給料は貰っているが、何せ高い。まあ、時間的にもそんな飲まないだろうからいいか。
「本当でありますか!いやあ、提督殿は太っ腹でありますなあ」
「その代わり、約束は守れよ。いいな」
「承ったであります」
あきつ丸は満足げだ。しかし言葉半分に聞いておこう。
「ていうか、お前ら店に気付かなかったのか。すぐそこだよ」
俺は足柄たちが出てきた路地の入り口を指差した。木の看板に「EST!EST!EST!」とある。
「あ、本当です……あの、姉さん、ごめんなさい」
羽黒が涙目になって謝る。俺はまあまあとなだめた。
「まあ見付けにくいしな。そもそもどこから入ればいいか分からんだろ。ほれ」
ドアは通りに直接面しておらず、少し隠れた位置にある。しかもこのドアがやたらと重厚で威圧感がある。一見で抵抗感なく入れたら、そいつはかなりの剛の者だ。
俺はそれを押し、店内に入った。
152 ◆ 2018/09/20(木) 22:13:01
中はカウンターとテーブルが一つ。それを茶色い落ち着いた光が照らしていた。
奇跡的に、カウンターには誰もいない。5人座れそうだ。
「いらっしゃい。5名様」
白髪の老人が出迎えた。にこやかで、親しみがわく接客だ。
「これがバーでちか……不思議な感じでちね。重たいのに、暖かい感じ」
「オーセンティックバーといってかしこまることはない。旨い酒を楽しめばいいだけだ」
さっきの老人がうんうんと頷いた。
「いかがしましょう。何がいいですか?」
「……メニューってないんだっけ。好みを言えばいいのかしら?」
足柄が困った様子だ。
「それで大丈夫ですよ。できるだけそれに沿ったものをお作りします」
「うーん、じゃあ甘くてスッキリしたの。あまりアルコールしてないのがいいかしら」
「かしこまりました。他の皆さんは」
「俺はギムレット。あきつ丸は」
「濃いのがいいでありますな。ラムベースで」
陸自出身でラムか。何気に海の適性があるんじゃなかろうか。
「承りました。そちらのお嬢さんは」
「あまり強くないのがいいでち。甘いので」
「あ、あの。あの、私は……ゴーヤちゃんと同じので。よく分からないですし」
「構いませんよ。少々お待ちを」
奇跡的に、カウンターには誰もいない。5人座れそうだ。
「いらっしゃい。5名様」
白髪の老人が出迎えた。にこやかで、親しみがわく接客だ。
「これがバーでちか……不思議な感じでちね。重たいのに、暖かい感じ」
「オーセンティックバーといってかしこまることはない。旨い酒を楽しめばいいだけだ」
さっきの老人がうんうんと頷いた。
「いかがしましょう。何がいいですか?」
「……メニューってないんだっけ。好みを言えばいいのかしら?」
足柄が困った様子だ。
「それで大丈夫ですよ。できるだけそれに沿ったものをお作りします」
「うーん、じゃあ甘くてスッキリしたの。あまりアルコールしてないのがいいかしら」
「かしこまりました。他の皆さんは」
「俺はギムレット。あきつ丸は」
「濃いのがいいでありますな。ラムベースで」
陸自出身でラムか。何気に海の適性があるんじゃなかろうか。
「承りました。そちらのお嬢さんは」
「あまり強くないのがいいでち。甘いので」
「あ、あの。あの、私は……ゴーヤちゃんと同じので。よく分からないですし」
「構いませんよ。少々お待ちを」
153 ◆ 2018/09/20(木) 22:33:52
そう言うと老人は軽やかな手付きでシェイカーを握り、猛烈な勢いで振り始めた。
「お、おお……」
あきつ丸が感嘆の声をあげる。その作業スピードは、到底80前の老人のそれとは思えない。
あっという間に、最初のグラスが出された。綺麗に切り揃えられたパイナップルがグラスに飾られている。中には黄色い液体だ。
「アプリコット・コラーダです。普通パイナップルジュースを使いますが、ここでは生搾りを。ココナッツも新鮮なのがあったので使ってみました。そこの八重歯がかわいいお嬢さんに」
「わ、私?あ、ありがとう」
一口飲むと、足柄の表情が一変した。
「何これ、美味しい!コクがあって、まろやかで……パイナップルの味がストレートに来るわ!こんなカクテル、飲んだことない……」
マスターは静かに微笑み、次のカクテルに向かう。すぐにショートグラスにシェイカーから酒が注がれる。
「ギムレットです。ただのギムレットではありませんよ。飲めば分かります」
俺はグラスに口をつける。
「……これはっ?まろやかさが全然違う……」
「ええ。いわゆるチャンドラー流のギムレットです。ライムジュースや絞ったライムにシロップを加えるのが一般的ですが、今回はローズ社のライムジュースを使いました。
『長いお別れ』で言及されているものですね。あのレシピそのままだと少し甘いので、ジンの比率を増やしてあります」
ゴーヤがぽかーんとしている。
「細かすぎてよく分かんないでち……」
「マスター、ひょっとして覚えてるのか?前に来たのは5年前だが」
マスターがにこやかに笑う。
「ええ、勿論。……と言いたいですが、那智さんからあなたのことは重々。妹さんのこともうかがってますよ」
「お、おお……」
あきつ丸が感嘆の声をあげる。その作業スピードは、到底80前の老人のそれとは思えない。
あっという間に、最初のグラスが出された。綺麗に切り揃えられたパイナップルがグラスに飾られている。中には黄色い液体だ。
「アプリコット・コラーダです。普通パイナップルジュースを使いますが、ここでは生搾りを。ココナッツも新鮮なのがあったので使ってみました。そこの八重歯がかわいいお嬢さんに」
「わ、私?あ、ありがとう」
一口飲むと、足柄の表情が一変した。
「何これ、美味しい!コクがあって、まろやかで……パイナップルの味がストレートに来るわ!こんなカクテル、飲んだことない……」
マスターは静かに微笑み、次のカクテルに向かう。すぐにショートグラスにシェイカーから酒が注がれる。
「ギムレットです。ただのギムレットではありませんよ。飲めば分かります」
俺はグラスに口をつける。
「……これはっ?まろやかさが全然違う……」
「ええ。いわゆるチャンドラー流のギムレットです。ライムジュースや絞ったライムにシロップを加えるのが一般的ですが、今回はローズ社のライムジュースを使いました。
『長いお別れ』で言及されているものですね。あのレシピそのままだと少し甘いので、ジンの比率を増やしてあります」
ゴーヤがぽかーんとしている。
「細かすぎてよく分かんないでち……」
「マスター、ひょっとして覚えてるのか?前に来たのは5年前だが」
マスターがにこやかに笑う。
「ええ、勿論。……と言いたいですが、那智さんからあなたのことは重々。妹さんのこともうかがってますよ」
154 ◆ 2018/09/20(木) 22:48:12
「わ、私たちのこともですか?ああっ、は、恥ずかしい……」
「あなたが羽黒さんですね。こちらを」
ゴーヤと羽黒の前に、薄く赤い液体入りのグラスが出された。
「これは?」
「ジャックローズというカクテルです。さ、どうぞ」
「……あ、美味しい!甘くて、少し酸っぱくて……」
「そして飲みやすいでち!アルコール、結構ある気がするけど……何杯でもいけそうでち」
最後に、あきつ丸に少し黒っぽいカクテルが出された。
「ダイキリです。飲める方と見て、一味変えました」
「ほうほう。……おおっ!これは……本当に濃厚でありますな!!」
「ラムでもブラックラムを使ってます。コクを出すため、ハチミツも隠し味に」
うんうんと頷きながらあきつ丸が飲む。
「ひょっとして、好みを事前に?」
「ええ。那智さんが『いつか来るだろうから』とお伝えになっていたのですよ。お気に召して頂いたようで何よりです」
「……脱帽です。完璧ですよ。俺の愛読書まで押さえていたとは……」
「いえいえ、この程度。……あ、いらっしゃい」
新たに客が入ってきた。時計を見ると、もうラーメン屋の閉店まで間もない。
「あ、行かなければ……マスター、ありがとう。今度は那智も連れてきます」
「いえいえ。また今度。お待ちしております」
味だけでなく、この丁寧な心配り。この店の常連になるとは、那智も流石、ただの酒飲みではない。
「あなたが羽黒さんですね。こちらを」
ゴーヤと羽黒の前に、薄く赤い液体入りのグラスが出された。
「これは?」
「ジャックローズというカクテルです。さ、どうぞ」
「……あ、美味しい!甘くて、少し酸っぱくて……」
「そして飲みやすいでち!アルコール、結構ある気がするけど……何杯でもいけそうでち」
最後に、あきつ丸に少し黒っぽいカクテルが出された。
「ダイキリです。飲める方と見て、一味変えました」
「ほうほう。……おおっ!これは……本当に濃厚でありますな!!」
「ラムでもブラックラムを使ってます。コクを出すため、ハチミツも隠し味に」
うんうんと頷きながらあきつ丸が飲む。
「ひょっとして、好みを事前に?」
「ええ。那智さんが『いつか来るだろうから』とお伝えになっていたのですよ。お気に召して頂いたようで何よりです」
「……脱帽です。完璧ですよ。俺の愛読書まで押さえていたとは……」
「いえいえ、この程度。……あ、いらっしゃい」
新たに客が入ってきた。時計を見ると、もうラーメン屋の閉店まで間もない。
「あ、行かなければ……マスター、ありがとう。今度は那智も連れてきます」
「いえいえ。また今度。お待ちしております」
味だけでなく、この丁寧な心配り。この店の常連になるとは、那智も流石、ただの酒飲みではない。
155 ◆ 2018/09/20(木) 22:48:51
ちょっと駆け足になりましたが、EST編はここまで。明日は本線です。
157 ◆ 2018/09/20(木) 22:55:46
なお、ESTは1杯が2000円ぐらいします。カクテルの描写はうろ覚えなのでご注意を。
158 2018/09/20(木) 23:21:46
乙
161 ◆ 2018/09/21(金) 13:20:43
#
「美味しかったでち!お酒苦手なゴーヤもすっきり飲めたでち」
「そうでありますなぁ。もう少しいたかったでありますが……」
「まあしゃあないな。足柄は元々大分飲んでたし、店の閉店までそうない。次はゆっくりできるといいが」
羽黒が俺に笑いかける。
「できれば那智姉さんも一緒にですね、司令官さん」
「ん、まあそうだな。……しかし諭吉1枚が死んだぞ。やっぱキツいな」
「えっ……?そ、そんなにかかったんですか?あ、あのっ、ご、ごめんなさい!!」
涙目になった羽黒の頭を俺は撫でた。
「謝る必要はねえよ。こっちはそれなりに貰ってるし、部下の慰労も俺の仕事だ。さて、行くとしますかね……都合よくワンボックスのタクシーが来たな。行くぞ」
目的地は末広町と蔵前の間だ。数分もかからず、目当ての店に着く。行列はないな。
「『らーめん天神下 大喜』でありますか」
「そう。塩ラーメンの老舗といえば、ここと新座の『ぜんや』だ。かつては全国人気ランキング1位だったこともある」
足柄が後部座席から身を乗り出してきた。
「凄いじゃない!そんなお店なのね!」
「まあ昔の話だ。ただ、ここの味が落ちたというより、ここをきっかけに塩が大きく進化していったというのが理由で、名店には違いない。さ、降りるぞ」
「美味しかったでち!お酒苦手なゴーヤもすっきり飲めたでち」
「そうでありますなぁ。もう少しいたかったでありますが……」
「まあしゃあないな。足柄は元々大分飲んでたし、店の閉店までそうない。次はゆっくりできるといいが」
羽黒が俺に笑いかける。
「できれば那智姉さんも一緒にですね、司令官さん」
「ん、まあそうだな。……しかし諭吉1枚が死んだぞ。やっぱキツいな」
「えっ……?そ、そんなにかかったんですか?あ、あのっ、ご、ごめんなさい!!」
涙目になった羽黒の頭を俺は撫でた。
「謝る必要はねえよ。こっちはそれなりに貰ってるし、部下の慰労も俺の仕事だ。さて、行くとしますかね……都合よくワンボックスのタクシーが来たな。行くぞ」
目的地は末広町と蔵前の間だ。数分もかからず、目当ての店に着く。行列はないな。
「『らーめん天神下 大喜』でありますか」
「そう。塩ラーメンの老舗といえば、ここと新座の『ぜんや』だ。かつては全国人気ランキング1位だったこともある」
足柄が後部座席から身を乗り出してきた。
「凄いじゃない!そんなお店なのね!」
「まあ昔の話だ。ただ、ここの味が落ちたというより、ここをきっかけに塩が大きく進化していったというのが理由で、名店には違いない。さ、降りるぞ」
162 ◆ 2018/09/21(金) 13:39:05
「ん、醤油もありますな……というか塩がないでありますが」
「とりそばが塩だ。醤油もハイレベルだが、ここは特製とりそばを頼もう」
5人前の特製とりそばを頼む。数分後、着丼。
「おー、これは……『鶏』って感じでち。鶏そぼろも乗ってるし。チャーシューも鶏なんでちね」
「その通り。まあスープからいってくれ」
俺もレンゲを口に運ぶ。じんわりと、鶏スープの滋味が拡がる。旨い。
塩が尖りすぎる塩ラーメンは多いが、ここはそんなことはない。鶏の味を引き立てるための塩だ。
「あっ、美味しい。というか、胃に優しいわぁ」
足柄がほっとしたような笑いを浮かべた。あきつ丸もうんうんと頷く。
「うむ、これであります。自分が求めていたものであります。見直したであります」
「それに、このワンタンでち。食感が変わって面白いでち」
「だろ。奇をてらわず、しかし工夫は見せる。だからこその老舗だな」
量がさほどでもないせいか、皆一気に平らげた。隣の羽黒が泣き笑いで言う。
「あ、あのっ、とっても、美味しかったです!突然お邪魔したのに、連れてきて下さって……司令官さんっ、本当にありがとうございます!」
「いやいや、だから泣くなよ。望むなら、また連れてきてやる」
「ほ、本当ですかっ!?」
羽黒が俺の手を握ってきた。……隣のゴーヤがコホンと咳払いする。
「ゴーヤたちも忘れないでほしいでち」
「あー、分かった分かった。さ、遅くなるから帰るぞ。……御馳走様でした」
店主に一礼する。今度は店の場所、間違えねえようにしないとな。
「とりそばが塩だ。醤油もハイレベルだが、ここは特製とりそばを頼もう」
5人前の特製とりそばを頼む。数分後、着丼。
「おー、これは……『鶏』って感じでち。鶏そぼろも乗ってるし。チャーシューも鶏なんでちね」
「その通り。まあスープからいってくれ」
俺もレンゲを口に運ぶ。じんわりと、鶏スープの滋味が拡がる。旨い。
塩が尖りすぎる塩ラーメンは多いが、ここはそんなことはない。鶏の味を引き立てるための塩だ。
「あっ、美味しい。というか、胃に優しいわぁ」
足柄がほっとしたような笑いを浮かべた。あきつ丸もうんうんと頷く。
「うむ、これであります。自分が求めていたものであります。見直したであります」
「それに、このワンタンでち。食感が変わって面白いでち」
「だろ。奇をてらわず、しかし工夫は見せる。だからこその老舗だな」
量がさほどでもないせいか、皆一気に平らげた。隣の羽黒が泣き笑いで言う。
「あ、あのっ、とっても、美味しかったです!突然お邪魔したのに、連れてきて下さって……司令官さんっ、本当にありがとうございます!」
「いやいや、だから泣くなよ。望むなら、また連れてきてやる」
「ほ、本当ですかっ!?」
羽黒が俺の手を握ってきた。……隣のゴーヤがコホンと咳払いする。
「ゴーヤたちも忘れないでほしいでち」
「あー、分かった分かった。さ、遅くなるから帰るぞ。……御馳走様でした」
店主に一礼する。今度は店の場所、間違えねえようにしないとな。
163 ◆ 2018/09/21(金) 13:58:39
#
「あ、司令官さんっ。お、お邪魔してます」
数日後。執務室に戻ると羽黒が恐縮しながら頭を下げていた。いつぞやの時のように、テーブルには湯飲みとカステラがある。……ということは。
「あー、また帰ってくるの早いでち。あっち行くでち」
「ここは俺の部屋なんだが?……例の女子会か?本当に羽黒を巻き込むとは。あきつ丸は」
「今日は留守でち。羽黒ちゃんと二人だけでち」
「……『ちゃん』?」
羽黒が笑顔で「はいっ」と答えた。
「帰りの電車で、ゴーヤちゃんとお話ししてて。同じ年だって分かったんです。それで意気投合しちゃって……」
「というわけでち。提督は邪魔でち」
「何でそんなに邪険に扱われなきゃあかんのだ……って羽黒。何でお前も笑ってる」
「い、いえっ。何でもないです……。でも、今日は、二人っきりの方がいいかなって」
「従順重巡」との異名を持つ羽黒にしては、珍しい態度だな。俺は首を捻りながら、部屋を後にした。
#
二人の会話内容を聞いて、俺が仰天するのは、また別の話だ。
「あ、司令官さんっ。お、お邪魔してます」
数日後。執務室に戻ると羽黒が恐縮しながら頭を下げていた。いつぞやの時のように、テーブルには湯飲みとカステラがある。……ということは。
「あー、また帰ってくるの早いでち。あっち行くでち」
「ここは俺の部屋なんだが?……例の女子会か?本当に羽黒を巻き込むとは。あきつ丸は」
「今日は留守でち。羽黒ちゃんと二人だけでち」
「……『ちゃん』?」
羽黒が笑顔で「はいっ」と答えた。
「帰りの電車で、ゴーヤちゃんとお話ししてて。同じ年だって分かったんです。それで意気投合しちゃって……」
「というわけでち。提督は邪魔でち」
「何でそんなに邪険に扱われなきゃあかんのだ……って羽黒。何でお前も笑ってる」
「い、いえっ。何でもないです……。でも、今日は、二人っきりの方がいいかなって」
「従順重巡」との異名を持つ羽黒にしては、珍しい態度だな。俺は首を捻りながら、部屋を後にした。
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二人の会話内容を聞いて、俺が仰天するのは、また別の話だ。
引用元:http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1536835183/