31   2018/10/14(日) 15:41:13

--スピカプロダクション
歌鈴「こんにちはPさんっ!また会えましたねっ!これからよろしくお願いしますっ!」

P「歌鈴じゃないか!どうしてここに?これからよろしくって...まさか!」

歌鈴「はいっ!アイドルになるために来ました!」

P「でも、巫女の仕事はどうしたんだ?」

歌鈴「あの後、お父さんに相談したんです!そうしたらお父さんが東京の知り合いの神主さんに連絡してくれて、住み込み修行も兼ねて上京させてくれたんですっ!」

歌鈴「アイドルと巫女、両方やるのは大変かもしれないですけど、それでもいいですか?」

P「ああ、大歓迎だ!そのかわり、どっちも本気でやるんだぞ。あと、キツくなったら必ず教えてくれ。日程とかは出来るだけ調整する。倒れられたらお父さんに申し訳ないからな」

ちひろ「ちょっと、Pさん、私を置いて話を進めないで下さいよ!」

P「あっ、すいません。つい興奮しちゃって...」

P「実は奈良に行った時に1回会ってるんです。その時にスカウトしたんですけど、巫女さんの仕事をしてたから厳しいと思って諦めて帰っちゃったんです」

ちひろ「なるほど、そういうことだったんですね。私も歓迎しますよ、歌鈴ちゃん」

歌鈴「あ、ありがとうございます〜」

P「改めて、俺はこのスピカプロダクションでプロデューサーをしてるPだ。よろしくな」

ちひろ「私はアシスタントの千川ちひろです。分からないことがあったらとりあえず私に聞いてくれれば大体のことは教えてあげますよ」

歌鈴「ど、道明寺歌鈴でつ!(噛んだ...)

ちひろ(噛んだ...)

P(いつものことだな...)


32   2018/10/14(日) 15:42:14

ちひろ「そういえば、Pさん、事務所入ってくるときすいませんとか言ってましたけど、どうしたんですか?」

P「あっ...えーっと...奈良のお土産をですね...その、買い忘れてしまいまして...」

ちひろ「えぇー!!奈良漬楽しみにしてたんですけど...」

歌鈴「あ、あの...奈良漬だったら私、待ってますけど...」

P、ちひろ「えっ?」

歌鈴「お父さんがお近づきの印にって持たせてくれたんです。一応老舗のお店のですよ」

ちひろ「あっ!これ有名なところじゃないですか!仕方ないですね、歌鈴ちゃんに免じて今回は許してあげます」

P「はい...次は必ず買ってきます...」

P(後で歌鈴に何かご馳走しないとな...)


33   2018/10/14(日) 15:42:34

--数日後、スピカプロダクション
ちひろ「今日はオーディションですね。私も行きたいところですが、事務所を入ったばかりの歌鈴ちゃん一人にするわけにはいかないので...」

P「希望者は二人しかいないので俺だけでも大丈夫ですよ。それじゃあ行ってきます」ガチャ


34   2018/10/14(日) 15:43:08

--事務所近くの喫茶店
P(オーディション希望者は...あのテーブルに座ってる二人かな?)

P「失礼します。自分はスピカプロダクションのプロデューサーですが、オーディション希望の方ですか?」

??「そうよ。私は松山久美子、21歳。アイドルになれればもっとキレイになれると思ったから応募したの」

P「なるほど、分かりました。それではあなたは?」

??「アタシは的場梨沙よ!パパにもっと可愛いって言ってほしくて応募したわ!もちろんアタシをアイドルにしてくれるでしょ?」

P「まあ、それはあと少し話してからで...、まず松山さん、キレイになるためにアイドルをやりたいとのことですが、もう少し詳しくお願いできますか?」

久美子「人に見られるとキレイになるって言うじゃない?アイドルならたくさんの人に見てもらえると思ったのよ」

P「それならアイドルじゃなくてもモデルとか女優でもいいんじゃないですか?」

久美子「ええ、だから他にも色々なオーディションを受けているわ」

P「なるほど。では的場さんにも一つ、あなたががアイドルになりたいのは、お父さんのためだけですか?」

梨沙「当たり前よ!アタシがパパ以外のためになにかするわけないじゃない!」


35   2018/10/14(日) 15:43:34

P「そうですか...。それでは、二人とも今回は落第です。他の事務所を当たって下さい」

梨沙「ちょっと!どういうこと!?説明してよ!」

P「まず、的場さん、芸能人が活躍するにはファンの応援が不可欠です。もちろん個人的な理由を持っていることは悪いことではないですが、それだけではファンはついてきません」

P「あなたがお父さんに褒められるためにアイドルをやるのは何の問題もありませんが、ファンのことを全く考えていないのはいただけません」

P「それから松山さん、あなたは自分に自信を持っていて、実際素晴らしい才能を持っているんでしょう」

P「しかし、その自信が仇になっています。自分がキレイになるために芸能界に入る。そのために色々なジャンルのオーディションを受けていては、あまりにも印象が悪い」

P「アイドルは立派な仕事です。そのような中途半端な覚悟でやりたいと言われても受け入れられません。一つの業界に絞ってオーディションは受けるべきです」

P「以上が理由です。何かありますか?」

久美子「なによ、そんな理由で落とされなきゃ行けないわけ?いいわ、そんなとこ私から願い下げよ」

梨沙「アタシを落とすなんて分からないオトナね!いいわよ、他の事務所を探すわ!」

P「何もないようですね。それではオーディションは終了です。お疲れ様でした」


36   2018/10/14(日) 15:43:56

--スピカプロダクション
P「ただ今戻りました」

ちひろ「あっ、Pさん、おかえりなさい。早かったんですね。オーディションはどうでしたか?」

P「二人とも落第です。覚悟が全くできてません」

ちひろ「覚悟ですか?そんなのは事務所に入ってからでもどうにでもなるんじゃないですか?」

P「はい。だから俺に考えがあります。もう少し待っていて下さい」


37   2018/10/14(日) 15:44:19

--2週間後、スピカプロダクション
ちひろ「Pさん、今日は出張ってことになってますけど、どこに行くんですか?」

P「この前オーディションした二人に会って来ようと思います」

ちひろ「今更ですか?何しに行くんです?」

P「まあ、後で分かりますよ」

ちひろ「Pさんはたまによく分からないことをしますね...」

P「そうですか?でも悪いようにはならないと思うので待っててくださいね」


38   2018/10/14(日) 15:44:51

--梨沙の家
ピンポ-ン

梨沙父「どちらさまですか?」

P「私はシンデレラプロダクションのPです。的場梨沙さんのお父さんですね?娘さんに少し話があるので呼んでいただけないでしょうか」

梨沙父「シンデレラプロダクション...ああ、この前梨沙がオーディションを受けた事務所ですね。今呼んできます」

梨沙「...何よ。話すことなんてないわ。帰ってよ」

P「残念だけど俺があるんだよ。的場さんのあれからのオーディションの結果を聞こうと思ってたけど、やっぱり思った通りだったみたいだな」

梨沙「思った通りって何よ。分かるなら言ってみなさい!」

P「書類審査は全て合格。実技の審査もまずまず。でも最終面接で毎回落とされる。落第理由も教えてくれないから対策もできない。そんな感じじゃないか?」

梨沙「...何?わざわざ調べてから来たの?悪趣味ね」

P「調べたわけじゃないさ。ただあの時のオーディションで分かったんだよ。君が相当な才能に恵まれいること、そしてアイドルになるための覚悟が全くできていないことをね」

P「才能があるから書類も実技も問題ない。だけど面接ではそれ以外のところが審査される。そうなると君はとことん弱い」

P「俺も君の履歴書を見たときは心が踊ったよ。こんな子が入ったら百人力だと思った。それだけに面接でがっかりしたんだ」
http://u111u.info/jT66

40   2018/10/14(日) 15:45:39

--久美子の家
ピンポ-ン

久美子「...何しに来たの、あなたに用なんてないんだけど」

P「ハハッ、見事に同じ反応だな。さっき的場さんの家に行ったけど同じことを言われたよ」

P「でも俺には用があるんだよ。あの後オーディションはどうだった?」

久美子「...全部落ちたわ。どこも見る目がないとこばかりね」

P「だから松山さんは不合格になったんだ。自分に自信があるあまり、非を認められていない。俺に言わせれば面接官は相当な目利きだな」

P「オーディションのときも言ったけど、松山さんはアイドルを舐めている。歌も踊りも半端でいい、容姿さえ良ければ誰でもなれると思っているんじゃないか?」

久美子「事実そうじゃないかしら?テレビに出てるアイドルは素人が見ても分かるような初歩的なミスが多い子がほとんどじゃない」

P「確かにそうだ。歌の音程は合わないし、ダンスの動きは小さかったり、周りとずれたりするなんてのは日常茶飯事だ。専門家が見たら酷評の嵐だろうな」


41   2018/10/14(日) 15:46:00

P「でも、ファンが求めているのはそんなことじゃない。アイドルがミスしながらも一生懸命に努力する姿に惹かれるんだ」

久美子「意味不明ね。完璧なステージを見てこそじゃない。ファンは諦めているのよ。どうせアイドルには完璧なパフォーマンスなんてできないってね」

P「松山さんはアイドルのステージを生で見たことがないでしょう。あったらそんなことは言えないはずだ」

久美子「ええ、ないわ。もっと見るべきものは他にたくさんあるから」

P「それなら今日の夜、ここに来てくれ。違う発見があるはずだ」

久美子「今日の高森藍子ソロライブチケット...ニュースで見たわね。確かすごいレアものって聞いたけど...」

P「俺はもう1枚持ってるから遠慮なく使ってくれ」


42   2018/10/14(日) 15:46:23

--ライブ会場
久美子「まさかこのチケットが指定席だったなんてね。本当にこんなのもらって良かったのかしら...、あれ?あの子は確か...」

梨沙「あら、松山さんじゃない!まさか松山さんもアイツに言われてここに来たの?」

久美子「ええ、何が言いたいのかよく分からなかったけど、せっかく貰ったから行かないと勿体無いと思ったのよ」

梨沙「アタシも意味が分からなかったわ。まあ、せっかくいい場所なんだし、普通に楽しむわよ!」

久美子「そうね。そろそろ始まりそうだし」



43   2018/10/14(日) 15:46:51

--数分後
藍子「こんばんは!高森藍子ですっ!今日は私のソロライブに来てくれて、ありがとうございます!」

ワ-ワ-ワ-ワ-!!!

藍子「今日のためにたくさんレッスンしてきました!最後まで観てくれたら嬉しいですっ!」

藍子「そういえば今日の朝、いいことがあったんですっ。緊張して早く起きすぎちゃったのでお散歩に行ったら...」

久美子「なかなか歌い出さないわね...」

P「これが藍子のやり方だからな」

梨沙「うわっ!なによ!いきなり出てきて!」

久美子「これがやり方ってどういうこと?」

P「藍子はそこまで体力がある方じゃないんだ。だからソロのときはトークをわざと多めにしてるんだ」

久美子「そんなの甘えじゃない。体力がないならつければいいのよ」

P「いや、これは戦略なんだ。体力のなさをプラスとして考えて、ゆったりしたMCを楽しんでもらおうとしてるってことだ」

P「ファンも藍子のMCを楽しみにしてるし、歌メインのステージにしては逆に不満が出るだろうな」

P「アイドルは完璧である必要はない。ファンにとって完全な存在であればなんだっていいんだ」


44   2018/10/14(日) 15:47:32

梨沙「アンタはさっきからファンっていっぱい言ってるけど、そんなにファンが必要なわけ?」

P「ああ、必要だ。まず一つに事務所が困る。ファンがいないとお金が入ってこないからな。でもそれよりも大事なことはモチベーションだな」

P「営業に行っても誰も見向きもせず、時には迷惑がられながら毎日歌えるか?2,3日なら大丈夫だと思うが、人気アイドルになるには何ヶ月も、もしかしたら何年もそれが続くんだ」

P「それでも続けられる人がいるのはファンの応援があるからだと思う。だからファンへの感謝は絶対に忘れてはいけないんだ」

P「藍子のMCを観て伝わってこないか?他愛もない話だけどファンを楽しませたいっていう強い気持ちが」

梨沙「...」

梨沙「さっきは気持ちは見えないなんて言ったけど、確かに感じるわね。これがアイドルなの?」

P「そうだ。それが体力のない藍子が人気アイドルになれた理由だろうな」

久美子「あなたの言いたいことは分かったわ。要するにアイドルやるならファンを第一に考えろってことでしょ。それで今更そんなことを私たちに伝えてどうするのよ。私も的場さんもオーディションは全部落ちたからもう手遅れよ?」

P「アイドルになるにはオーディションに合格する以外にも方法はあるぞ?例えばスカウトとかな」

梨沙「スカウトされるまでなんて待てないわ!アタシはまた違う事務所のオーディションを受けるわよ!」


45   2018/10/14(日) 15:47:56

P「それは残念だなぁ。せっかくうちの事務所にスカウトしようと思ってたのに」

久美子、梨沙「えっ!?」

P「2人とも今の話でなんとなくアイドルとはどうあるべきかが分かったみたいだしな。あのとき言った落第理由がなくなったんだ。別にスカウトしてもおかしい話じゃないだろう?」

P「なんとなくではまだまだ足りないけど、デビューしたらはっきりと分かってくるさ。それで、スカウトの返事はどうするんだ?小さい事務所だが、全力でサポートするぞ?」

久美子「もしかしてここまで分かってて落第にしたわけ?もし他のところに合格してたらどうするつもりだったの?」

P「それは考えてなかったな。俺は見る目だけは自信があるんだ」

梨沙「なんか手のひらで踊らされてたみたいで悔しいわね...。でも、なかなかやるじゃない!いいわ、アンタの事務所に入ってあげる!そのかわり絶対トップアイドルにしなさいよ!」

P「ああ、的場さんならすぐになれるよ。それで、松山さんはどうする?」

久美子「あなたの話を聞いて分かったの。やっぱり私はアイドルを舐めてたのね。でも今は違う。私、モデルでも、女優でもなく、アイドルがやりたい!」

P「じゃあ決まりだな、このライブ後は時間はあるか?あるなら手続きを始めたいんだけど...」

梨沙「もちろんあるわ!」

久美子「私も大丈夫よ」

P「そうか、じゃあ終わったら事務所まで送るよ。さて、話も済んだことだし、ライブを楽しもうか」


46   2018/10/14(日) 15:48:30

梨沙「ねぇ、そういえばなんだけど、どうやってこのチケット手に入れたの?しかも3枚も。すごい倍率高かったはずだけど」

P「実は前の事務所で藍子の担当プロデューサーをしてたんだ。今は色々あってクビになったけど、このイベントはその前から決まってたから関係者ってことで何枚かもらったんだよ」

梨沙「へぇ...って、はぁ!?アンタが高森藍子のプロデューサーだった!?そんなの聞いてないわよ!」

P「言ってないからな。でも見る目に自信があるって言ったろ?実績がなかったらそんなこと言えないよ」

梨沙「そんなので気づくわけないでしょ!」

P「ほら、もうすぐ歌に入るから聞こう。いい歌だぞ」

久美子「話を逸らしたわね...」




久美子(でも、見る目があるってのは本当みたい。もしかしたら私もいつかは高森藍子みたいになれるのかな...)
http://u111u.info/jT66

47   2018/10/14(日) 15:49:42

〜〜Make up your mind完〜〜


引用元:http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1538297576/