4 2018/12/07(金) 22:12:25
『・・・・・・なた・・・・・・そ・・・・た・・・?』
ああ……またこの夢か。
眩い光の中、顔も見えない少女が俺を呼び続ける夢……幼い頃から、幾度となく繰り返し見てきた。
普通何年も同じ夢を見続けたら、気味が悪いと感じるだろう。でも、俺はそんなこと一度もなかった。……それくらい、彼女は綺麗だった。
今まで、何度もその声に応えようとしてきた……けれども、俺の声は一度も彼女に届いたことはない。手を伸ばしても、途中で見えない壁に遮られてしまう。
まるで、二人は出会ってはいけないと運命づけられているみたいだった。
P「………そんな運命、クソくらえだ」
俺は行かなきゃいけない。この壁の向こう、彼女の元へ…
理由なんてない、必要ない。だって、
俺はもう、彼女に――
ああ……またこの夢か。
眩い光の中、顔も見えない少女が俺を呼び続ける夢……幼い頃から、幾度となく繰り返し見てきた。
普通何年も同じ夢を見続けたら、気味が悪いと感じるだろう。でも、俺はそんなこと一度もなかった。……それくらい、彼女は綺麗だった。
今まで、何度もその声に応えようとしてきた……けれども、俺の声は一度も彼女に届いたことはない。手を伸ばしても、途中で見えない壁に遮られてしまう。
まるで、二人は出会ってはいけないと運命づけられているみたいだった。
P「………そんな運命、クソくらえだ」
俺は行かなきゃいけない。この壁の向こう、彼女の元へ…
理由なんてない、必要ない。だって、
俺はもう、彼女に――
5 2018/12/07(金) 22:13:21
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ
P「……………朝か」
耳障りな目覚まし時計の音で、目が覚める。のそのそとベッドから這い出て、洗面台に向かう。
P「……っ」ガッ
その途中で、足元に無造作に置かれたテレビのリモコンで躓きそうになる。この一連の流れを経て、ようやく新しい1日が始まったことを自覚する。
P「………やっぱり、片目だと不便だな…
P「……………朝か」
耳障りな目覚まし時計の音で、目が覚める。のそのそとベッドから這い出て、洗面台に向かう。
P「……っ」ガッ
その途中で、足元に無造作に置かれたテレビのリモコンで躓きそうになる。この一連の流れを経て、ようやく新しい1日が始まったことを自覚する。
P「………やっぱり、片目だと不便だな…
6 2018/12/07(金) 22:14:20
テレビの音をBGMに、朝食をとる。ジャムを雑に塗りたくった特売品の食パンと一番安い銘柄のコーヒーが俺の毎朝の食事だ。別に美味しくもなんともないが、一応腹の足しにはなるのでよしとする。
誰かと一緒に生活しているならともかく、一人暮らしの成人男性の朝なんてこんなものだろう……なんてことを言うと、いつも叱ってくれる女の子がいるっていうのは…恵まれていると考えていいのだろうか。
P「………ごちそうさま」
食べ終わった皿を適当に洗い、流しに放置する。
再び洗面台に向かい、身だしなみを整える。こればかりは手を抜けない。自分のことはどうでもいいが、あの子にだけは迷惑をかけるわけにはいかない。身だしなみの悪さが原因で取れるはずだった仕事を逃す…なんてことになったら目も当てられないからだ。
身だしなみを整え終わった後、パジャマ代わりのシャツを脱ぎ捨て、スーツに着替える。最後に通勤鞄の中身を確認し、家を出る。
P「さて…今日も頑張りますか」
誰かと一緒に生活しているならともかく、一人暮らしの成人男性の朝なんてこんなものだろう……なんてことを言うと、いつも叱ってくれる女の子がいるっていうのは…恵まれていると考えていいのだろうか。
P「………ごちそうさま」
食べ終わった皿を適当に洗い、流しに放置する。
再び洗面台に向かい、身だしなみを整える。こればかりは手を抜けない。自分のことはどうでもいいが、あの子にだけは迷惑をかけるわけにはいかない。身だしなみの悪さが原因で取れるはずだった仕事を逃す…なんてことになったら目も当てられないからだ。
身だしなみを整え終わった後、パジャマ代わりのシャツを脱ぎ捨て、スーツに着替える。最後に通勤鞄の中身を確認し、家を出る。
P「さて…今日も頑張りますか」
7 2018/12/07(金) 22:15:55
俺が住んでいるのは東京都内にあるアパート。オンボロだが、家賃は安いので住み続けている。
駅まで徒歩15分、これを遠いと感じるか、近いと感じるかは人それぞれだと思うが…俺は満足している。
定期券を使い、改札口を通る。待つこと数分、電車がやってくる。様々な年齢層の乗車客がいるなか、俺も乗り込む。
揺れる電車の中で、スマホをいじる。あっ、あの子からメッセージがきてる……ええっと?
『おはようさんどす、Pはん。朝ごはん食べはりました?しっかり食べないと、1日ぱわーがでまへんで! うち、Pはんがいつ倒れてまうか不安で不安で……あまり心配させんといて?』
P「…………」
P『大丈夫だよ、今日はちゃんと食べてきたから。紗枝の方こそ、しっかり休めているか?無理してないか?困ったことがあったら、すぐに言うんだぞ。俺はお前のプロデューサーなんだからな』
P「…送信っと」ピッ
メッセージを打ち込み、送信する……既読早っ!
『Pはんと違って、自分の健康に気ぃつけてるさかい、大丈夫どす!……でも、心配してくておおきに♪ 今日もPはんに元気な姿見せますえ、期待しとってや~』
P「紗枝……本当にいい子だな…」
……明日からはもう少しちゃんとした朝食、とるか…
駅まで徒歩15分、これを遠いと感じるか、近いと感じるかは人それぞれだと思うが…俺は満足している。
定期券を使い、改札口を通る。待つこと数分、電車がやってくる。様々な年齢層の乗車客がいるなか、俺も乗り込む。
揺れる電車の中で、スマホをいじる。あっ、あの子からメッセージがきてる……ええっと?
『おはようさんどす、Pはん。朝ごはん食べはりました?しっかり食べないと、1日ぱわーがでまへんで! うち、Pはんがいつ倒れてまうか不安で不安で……あまり心配させんといて?』
P「…………」
P『大丈夫だよ、今日はちゃんと食べてきたから。紗枝の方こそ、しっかり休めているか?無理してないか?困ったことがあったら、すぐに言うんだぞ。俺はお前のプロデューサーなんだからな』
P「…送信っと」ピッ
メッセージを打ち込み、送信する……既読早っ!
『Pはんと違って、自分の健康に気ぃつけてるさかい、大丈夫どす!……でも、心配してくておおきに♪ 今日もPはんに元気な姿見せますえ、期待しとってや~』
P「紗枝……本当にいい子だな…」
……明日からはもう少しちゃんとした朝食、とるか…
8 2018/12/07(金) 22:18:06
俺の名前はP。芸能事務所、346プロダクションのアイドル部門でプロデューサーとして働いている。
346プロのアイドル部門は3つの課に分かれており、俺の所属は第2芸能課だ。
担当アイドルはまだ1人だけだが…とてもやりがいのある仕事だと思っている。
まだまだプロデューサーになったばかりの新人だけど……あの子のためにも頑張らないとな。
346プロのアイドル部門は3つの課に分かれており、俺の所属は第2芸能課だ。
担当アイドルはまだ1人だけだが…とてもやりがいのある仕事だと思っている。
まだまだプロデューサーになったばかりの新人だけど……あの子のためにも頑張らないとな。
9 2018/12/07(金) 22:19:40
~346プロ 第2芸能課~
P「おはようございます」ガチャ
同僚P「ん…?ああPか、おはよう」
彼は俺と同じ第2芸能課所属の同僚Pさん。かつて346プロに存在していた旧アイドル部門ですでに活躍していた先輩プロデューサーだ。
入社時から、俺の面倒をみてくれている。プロデュースで分からないことがあると、的確なアドバイスをくれる頼りになる人だ。
同僚P「最近調子がいいみたいだな。この前のライブ、大成功だったみたいじゃないか」
P「はい。あの日のために紗枝、ずっと頑張っていましたから…本当に努力家な子です。俺も、彼女に置いてかれないよう精進しないといけませんね」
同僚P「いい心がけだな。今後も期待できそうだ……あっ、そうだ、お前に伝えないといけないことがあったんだった」
P「? なんでしょう」
同僚P「社長がお前に話があるそうだ」
P「社長が…?俺に一体なにを……」
同僚P「そう心配するな、悪い話ではないだろうからな……まぁ346プロの新人プロデューサーに対する一種のお約束みたいなものだ。気張らずに行ってこい」
P「……?」
P「おはようございます」ガチャ
同僚P「ん…?ああPか、おはよう」
彼は俺と同じ第2芸能課所属の同僚Pさん。かつて346プロに存在していた旧アイドル部門ですでに活躍していた先輩プロデューサーだ。
入社時から、俺の面倒をみてくれている。プロデュースで分からないことがあると、的確なアドバイスをくれる頼りになる人だ。
同僚P「最近調子がいいみたいだな。この前のライブ、大成功だったみたいじゃないか」
P「はい。あの日のために紗枝、ずっと頑張っていましたから…本当に努力家な子です。俺も、彼女に置いてかれないよう精進しないといけませんね」
同僚P「いい心がけだな。今後も期待できそうだ……あっ、そうだ、お前に伝えないといけないことがあったんだった」
P「? なんでしょう」
同僚P「社長がお前に話があるそうだ」
P「社長が…?俺に一体なにを……」
同僚P「そう心配するな、悪い話ではないだろうからな……まぁ346プロの新人プロデューサーに対する一種のお約束みたいなものだ。気張らずに行ってこい」
P「……?」
10 2018/12/07(金) 22:21:17
~社長室~
トントン
『入りたまえ』
P「失礼します」ガチャ
社長「おおっ、Pくん!来てくれたか、待ちわびたぞ!最近どうかね、プロデューサー業務には慣れてきたかい?」
P「ええ、まだまだ若輩の身ですが…担当アイドルと二人三脚で頑張っています」
社長「紗枝くんか、いや~、彼女は本当に素晴らしいアイドルになったね。現代人が忘れてしまった和の心…それを思い出させてくれる。彼女をスカウトした身としては、実に誇らしいよ」
P「ありがとうございます。是非、彼女にも言ってあげてください。きっと、すごく喜ぶと
思います。……いつも頑張っていますから」
社長「うむ、そうだな!時間を見つけて、声を掛けに行こうと思うよ」
P「……それで、社長。私に何かご用でしょうか」
社長「おお…そうだったな、では単刀直入に言わせてもらおう。Pくん、君に“シンデレラプロジェクト”に相応しい女の子を見つけてきて貰いたい」
P「……なるほど、スカウトですか」
トントン
『入りたまえ』
P「失礼します」ガチャ
社長「おおっ、Pくん!来てくれたか、待ちわびたぞ!最近どうかね、プロデューサー業務には慣れてきたかい?」
P「ええ、まだまだ若輩の身ですが…担当アイドルと二人三脚で頑張っています」
社長「紗枝くんか、いや~、彼女は本当に素晴らしいアイドルになったね。現代人が忘れてしまった和の心…それを思い出させてくれる。彼女をスカウトした身としては、実に誇らしいよ」
P「ありがとうございます。是非、彼女にも言ってあげてください。きっと、すごく喜ぶと
思います。……いつも頑張っていますから」
社長「うむ、そうだな!時間を見つけて、声を掛けに行こうと思うよ」
P「……それで、社長。私に何かご用でしょうか」
社長「おお…そうだったな、では単刀直入に言わせてもらおう。Pくん、君に“シンデレラプロジェクト”に相応しい女の子を見つけてきて貰いたい」
P「……なるほど、スカウトですか」
11 2018/12/07(金) 22:23:46
“シンデレラプロジェクト“ それは新設されたアイドル部門が始めた一大企画だ。
個性的なアイドルの発掘及び育成を目標としている。あの子もこのプロジェクトに選ばれたアイドルの一人だ。
P「民衆全てに愛される、新たな時代の象徴たるシンデレラを誕生させる……ですよね」
社長「ほう…?よくわかってるじゃないか。その通りだよ」
新たな時代の象徴……か
社長「引き受けてくれるか?」
P「……期限はどれくらいですか」
社長「そうだね…とりあえず1週間でどうだい?」
P「1週間……短いですね」
社長「そう思うだろう?でも、実はそうでもないんだよ」
社長「この事務所に所属するプロデューサーは皆、私が見出した者達だ。魔法使いたる人間にはな、必ず運命というものがついてまわるものさ。……君にもいるんだろう?そういう相手が」
P「!」
『そなた…?』
………運命
P「分かりました。引き受けます」
社長「よし!期待しているよ、Pくん」
個性的なアイドルの発掘及び育成を目標としている。あの子もこのプロジェクトに選ばれたアイドルの一人だ。
P「民衆全てに愛される、新たな時代の象徴たるシンデレラを誕生させる……ですよね」
社長「ほう…?よくわかってるじゃないか。その通りだよ」
新たな時代の象徴……か
社長「引き受けてくれるか?」
P「……期限はどれくらいですか」
社長「そうだね…とりあえず1週間でどうだい?」
P「1週間……短いですね」
社長「そう思うだろう?でも、実はそうでもないんだよ」
社長「この事務所に所属するプロデューサーは皆、私が見出した者達だ。魔法使いたる人間にはな、必ず運命というものがついてまわるものさ。……君にもいるんだろう?そういう相手が」
P「!」
『そなた…?』
………運命
P「分かりました。引き受けます」
社長「よし!期待しているよ、Pくん」
12 2018/12/07(金) 22:24:53
P「……」
社長に頼まれ、新たなアイドル候補を探すことになった俺。……さて、どこを探すか。
「ぷろでゅーさーはん♪」
後ろから誰かに声を掛けられる、振り返ると…
P「紗枝か。おはよう」
綺麗な黒髪を持ち、淡い緑色の和服を身にまとった少女が立っていた。
ゆったりとした口調や所作から、はんなりとした雰囲気と上品さを醸し出している。
彼女の名前は小早川紗枝。プロデューサーとして、俺が担当しているアイドルだ。
俺と彼女の関係はそれだけではないのだが……まぁ、それは別の話だ。
紗枝「おはようさんどす~ な~んか考え込んではるみたいやけど、どないんしたん?」
P「ああ…実は、社長からの頼みで1週間、新しいアイドルのスカウトに行くことになったんだよ」
紗枝「まぁ、新しいあいどる?もしかして、ぷろでゅーさーはんの担当が増えるちゅうことどすか?」
P「……まぁ、見つけられたらの話だけどな」
紗枝「どこを探すつもりなん?」
P「そうだな…今日1日、都内を見て回ろうと思う。それで見つからなかったら……県外かな」
紗枝「そう…ふふっ、大変やね。うちと初めて出会った時みたいに、行き倒れないよう気ぃつけてや~♪」クスクス
P「だ、大丈夫だよ……多分」
社長に頼まれ、新たなアイドル候補を探すことになった俺。……さて、どこを探すか。
「ぷろでゅーさーはん♪」
後ろから誰かに声を掛けられる、振り返ると…
P「紗枝か。おはよう」
綺麗な黒髪を持ち、淡い緑色の和服を身にまとった少女が立っていた。
ゆったりとした口調や所作から、はんなりとした雰囲気と上品さを醸し出している。
彼女の名前は小早川紗枝。プロデューサーとして、俺が担当しているアイドルだ。
俺と彼女の関係はそれだけではないのだが……まぁ、それは別の話だ。
紗枝「おはようさんどす~ な~んか考え込んではるみたいやけど、どないんしたん?」
P「ああ…実は、社長からの頼みで1週間、新しいアイドルのスカウトに行くことになったんだよ」
紗枝「まぁ、新しいあいどる?もしかして、ぷろでゅーさーはんの担当が増えるちゅうことどすか?」
P「……まぁ、見つけられたらの話だけどな」
紗枝「どこを探すつもりなん?」
P「そうだな…今日1日、都内を見て回ろうと思う。それで見つからなかったら……県外かな」
紗枝「そう…ふふっ、大変やね。うちと初めて出会った時みたいに、行き倒れないよう気ぃつけてや~♪」クスクス
P「だ、大丈夫だよ……多分」
13 2018/12/07(金) 22:26:22
紗枝と別れ、都内へスカウトに繰り出した俺。
若者が集まりそうな場所を重点的に見て回ったが……ピンとくる人は一人もいなかった。
気づいた時には、日が沈む時間になっていた。
P「……やっぱり、ここにはいない気がする」
もう遅いし、今日はここまでにしよう。そう考えた俺は帰宅することにした。
……大丈夫、猶予はまだある。ゆっくり探していこう。
若者が集まりそうな場所を重点的に見て回ったが……ピンとくる人は一人もいなかった。
気づいた時には、日が沈む時間になっていた。
P「……やっぱり、ここにはいない気がする」
もう遅いし、今日はここまでにしよう。そう考えた俺は帰宅することにした。
……大丈夫、猶予はまだある。ゆっくり探していこう。
14 2018/12/07(金) 22:27:13
P「……あれ?」
気がつくと、俺は見たこともない浜辺に立っていた。正面に広がるのは青い海。
『そなた』
P「!」クルッ
……聞こえた。はっきりと。
P「君は…」
あいかわらず、顔はぼんやりしていて見えないが……間違いなく、夢の中でいつも見ていた少女が、そこに立っていた。
『そなた・・・わたくしは・・・いつまでも・・・そなたのことを・・・・・・お待ちしております・・・・』
少女と向き合った瞬間、その姿が陽炎のようにに薄れていく。
P「ま、待ってくれ!君は、君は一体…!!」
『・・・・・・そなたのことを・・・ずっと想っている・・・ただの女ですよ』
P「……!まっ…!」
気がつくと、俺は見たこともない浜辺に立っていた。正面に広がるのは青い海。
『そなた』
P「!」クルッ
……聞こえた。はっきりと。
P「君は…」
あいかわらず、顔はぼんやりしていて見えないが……間違いなく、夢の中でいつも見ていた少女が、そこに立っていた。
『そなた・・・わたくしは・・・いつまでも・・・そなたのことを・・・・・・お待ちしております・・・・』
少女と向き合った瞬間、その姿が陽炎のようにに薄れていく。
P「ま、待ってくれ!君は、君は一体…!!」
『・・・・・・そなたのことを・・・ずっと想っている・・・ただの女ですよ』
P「……!まっ…!」
15 2018/12/07(金) 22:29:03
P「待って!!!」ガバッ
チュンチュン チュンチュン
P「夢……か…?」
そうか、帰宅してからそのまま寝てしまってたか。
いつもとは違う夢…これは…
P「………海……島…………離島?」
あの少女がいるのは……
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ
P「!」ビクッ
俺の思考を邪魔する耳障りな音が。
P「煩い…!」バン
P(後もう少しで、何かが掴めそうなんだ……!)
すぐさまベッドから降り、PCを起動する。起動時間すらもどかしい。
P(離島……海…風景…)カタカタ
思いついたキーワードを、入力フォームに打ち込んでいく。
P「出た…!」
インターネットというものは非常に便利だ。調べたいと思ったことをすぐさま調べることができる。
画像検索に切り替え、画面を下方向へスクロールしていく。
P(ちがう、ちがう、これもちがう………、!)
見つけた。
画像をクリックし、表示されたURLに飛ぶ。そこには…
P「繋想島……」
夢でみた光景と、よく似た風景の場所が映し出されていた。
………運命が、始まった気がする。
チュンチュン チュンチュン
P「夢……か…?」
そうか、帰宅してからそのまま寝てしまってたか。
いつもとは違う夢…これは…
P「………海……島…………離島?」
あの少女がいるのは……
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ
P「!」ビクッ
俺の思考を邪魔する耳障りな音が。
P「煩い…!」バン
P(後もう少しで、何かが掴めそうなんだ……!)
すぐさまベッドから降り、PCを起動する。起動時間すらもどかしい。
P(離島……海…風景…)カタカタ
思いついたキーワードを、入力フォームに打ち込んでいく。
P「出た…!」
インターネットというものは非常に便利だ。調べたいと思ったことをすぐさま調べることができる。
画像検索に切り替え、画面を下方向へスクロールしていく。
P(ちがう、ちがう、これもちがう………、!)
見つけた。
画像をクリックし、表示されたURLに飛ぶ。そこには…
P「繋想島……」
夢でみた光景と、よく似た風景の場所が映し出されていた。
………運命が、始まった気がする。
16 2018/12/07(金) 22:30:13
~???~
「………時が、動き始めましたか」
トットットッ スゥー・・・タン!
「ばばさま……!」
「ええ……分かっておりますよ。遂に、この時が来ましたね」
「ばばさま……あの方は…」
「ええ…彼の者こそ、“あの人”の現世の姿……貴方の…“ヨシノ”の、運命の相手です」
「……!」
「母上……いえ、“ヨシノさま”の願いが遂に果たされんとしているのです。……芳乃。貴方が、依田家が代々受け継いできた願いを叶えるのです……最後の“ヨシノ”として」
「……で、では、ばばさまは数日後には、もう…」
「ええ……そういうことになります」
「………」ギュッ
「……心配いりませんよ、私は死ぬのではありません、役目を終え、―――になるのです。そして、皆と同じ場所へ……」
「………―――」
「大丈夫、あなたはひとりじゃありません……きっと、彼の者が貴方を支え、導いてくれるでしょう」
「………うう」ギュゥー
「そんな顔をしないでください、せっかくの愛くるしい顔が台無しですよ?」
「ばばさまぁ……」
「もう…16になっても、甘えんぼですね」クスッ
「そ、そんなことありませぬー」アセアセ
「ふふふ、彼の者を迎えいれるための準備をしなくてはなりませんね……手伝ってくださいますか、芳乃?」
「………はいー!」
「………時が、動き始めましたか」
トットットッ スゥー・・・タン!
「ばばさま……!」
「ええ……分かっておりますよ。遂に、この時が来ましたね」
「ばばさま……あの方は…」
「ええ…彼の者こそ、“あの人”の現世の姿……貴方の…“ヨシノ”の、運命の相手です」
「……!」
「母上……いえ、“ヨシノさま”の願いが遂に果たされんとしているのです。……芳乃。貴方が、依田家が代々受け継いできた願いを叶えるのです……最後の“ヨシノ”として」
「……で、では、ばばさまは数日後には、もう…」
「ええ……そういうことになります」
「………」ギュッ
「……心配いりませんよ、私は死ぬのではありません、役目を終え、―――になるのです。そして、皆と同じ場所へ……」
「………―――」
「大丈夫、あなたはひとりじゃありません……きっと、彼の者が貴方を支え、導いてくれるでしょう」
「………うう」ギュゥー
「そんな顔をしないでください、せっかくの愛くるしい顔が台無しですよ?」
「ばばさまぁ……」
「もう…16になっても、甘えんぼですね」クスッ
「そ、そんなことありませぬー」アセアセ
「ふふふ、彼の者を迎えいれるための準備をしなくてはなりませんね……手伝ってくださいますか、芳乃?」
「………はいー!」
17 2018/12/07(金) 22:31:53
繋想島。それは日本が有する離島の一つであり、鹿児島県の一部と定義されている…が、その島は非常に遠い場所に位置している。
ネットで調べた情報によると、繋想島へ行くにはまず、鹿児島空港を経由して与論空港へと向かう。
繋想島への公的交通機関は存在しないので、与論島に着いた後は現地住民の助けを借りて、船で向かわなければならないらしい。
それほどまでの手順をかけて現地に着いたところで、あるのは自然と小さな集落がいくつかのみだという。
そんな場所へ向かうのは余程の暇人か変わり者だけだそうだ。
……夢でみた風景に似ていたから、そんな理由で向かう俺は間違いなく変わり者に分類されるだろう。
紗枝にこのことを伝えたら、腹を抱えて笑われてしまった。
色々と面倒な手続きがあり、繋想島へ向かうための準備が整ったのは、スカウト開始から何日も経った後だった。
そして、今俺がいる場所は…
ネットで調べた情報によると、繋想島へ行くにはまず、鹿児島空港を経由して与論空港へと向かう。
繋想島への公的交通機関は存在しないので、与論島に着いた後は現地住民の助けを借りて、船で向かわなければならないらしい。
それほどまでの手順をかけて現地に着いたところで、あるのは自然と小さな集落がいくつかのみだという。
そんな場所へ向かうのは余程の暇人か変わり者だけだそうだ。
……夢でみた風景に似ていたから、そんな理由で向かう俺は間違いなく変わり者に分類されるだろう。
紗枝にこのことを伝えたら、腹を抱えて笑われてしまった。
色々と面倒な手続きがあり、繋想島へ向かうための準備が整ったのは、スカウト開始から何日も経った後だった。
そして、今俺がいる場所は…
18 2018/12/07(金) 22:32:35
~繋想島 森~
P「……ヤバい、迷った」
何もない場所とは聞いていたが、コンビニひとつないとは……マップを見ようにもスマホは圏外。こうなっては文明の利器も無用の長物だ。
P「腹へった……」
こんなことなら、もっとたくさん食糧を用意しておくべきだった。
手元にあるのはほんの一握りのガムのみ…
P「暑い……」
水筒の中身はすっからかん、水道なんて大層なものは存在しない。
P(ヤバいな……本当に行き倒れるかもしれない)フラフラ
視界が揺れ始める。体力の限界か、俺はとうとう・・・・・・
P「……ヤバい、迷った」
何もない場所とは聞いていたが、コンビニひとつないとは……マップを見ようにもスマホは圏外。こうなっては文明の利器も無用の長物だ。
P「腹へった……」
こんなことなら、もっとたくさん食糧を用意しておくべきだった。
手元にあるのはほんの一握りのガムのみ…
P「暑い……」
水筒の中身はすっからかん、水道なんて大層なものは存在しない。
P(ヤバいな……本当に行き倒れるかもしれない)フラフラ
視界が揺れ始める。体力の限界か、俺はとうとう・・・・・・
19 2018/12/07(金) 22:33:41
P「……あれ……ここは……?」
目が覚めると、俺は日の当たらない木の茂みに横たわっていた。
P(おかしいな……どうしてこんなところに……ん?)パサッ
上半身を起こすと、額に置かれていたであろう濡れ布巾が落ちてきた。
よく見れば、上半身の衣服も脱がされ……って、え!?
「目が覚められましたかー?」
――声が聞こえた。どこか懐かしい…声が。
声のした方へ顔を向ける、そこには…
少女「お体に不調はございましてー?」
少女がいた。水色と白色の縞模様が描かれた和服を身にまとい、頭には服とお揃いのリボン…
長い髪の毛は赤い紐で結ばれている。
P「――」
この子だ。
想像していた姿よりも幼げな印象を受けたが、間違いない。
目が覚めると、俺は日の当たらない木の茂みに横たわっていた。
P(おかしいな……どうしてこんなところに……ん?)パサッ
上半身を起こすと、額に置かれていたであろう濡れ布巾が落ちてきた。
よく見れば、上半身の衣服も脱がされ……って、え!?
「目が覚められましたかー?」
――声が聞こえた。どこか懐かしい…声が。
声のした方へ顔を向ける、そこには…
少女「お体に不調はございましてー?」
少女がいた。水色と白色の縞模様が描かれた和服を身にまとい、頭には服とお揃いのリボン…
長い髪の毛は赤い紐で結ばれている。
P「――」
この子だ。
想像していた姿よりも幼げな印象を受けたが、間違いない。
20 2018/12/07(金) 22:35:00
少女「もしもしー?」フリフリ
P「――っは、ご、ごめん!……もしかして、君が助けてくれたのか」
少女「わたくしを探し求める気を感じ、ここまで来たのですがー、そなたが倒れていたので驚きましたー」オミズデシテー
P「そ、そっか……って、え?探し求めていた…?ど、どうしてそれを……君は一体…」ア、アリガトウ・・・
芳乃「わたくし依田は芳乃と申しましてー、昔から依田の家はかんなぎや拝み屋の血筋だったと言われておりますー。それゆえにー、そなたのこころにわたくしのこころがよばれたのでしょうー」
かんなぎ。神の依り代、または神の憑依、または神との交信をする行為や、その役割を務める人を表す。
………神だなんて、そんなもの。
芳乃「…………そなた?」ズイッ
P「! な、なんだ!?」ビクッ
芳乃「今、そなたから良くない気を感じましたー。身に覚えはありませぬかー?」
P「――!」
……この子
P「……いや、何もないよ」ニコッ
芳乃「……そうですかー」
……今は、神がどうのこうの気にしている場合じゃないな。俺の目的は、あくまでも“彼女”だ。
彼女が普通の少女ではないことは、確かみたいだしな。
……なら。
P「――っは、ご、ごめん!……もしかして、君が助けてくれたのか」
少女「わたくしを探し求める気を感じ、ここまで来たのですがー、そなたが倒れていたので驚きましたー」オミズデシテー
P「そ、そっか……って、え?探し求めていた…?ど、どうしてそれを……君は一体…」ア、アリガトウ・・・
芳乃「わたくし依田は芳乃と申しましてー、昔から依田の家はかんなぎや拝み屋の血筋だったと言われておりますー。それゆえにー、そなたのこころにわたくしのこころがよばれたのでしょうー」
かんなぎ。神の依り代、または神の憑依、または神との交信をする行為や、その役割を務める人を表す。
………神だなんて、そんなもの。
芳乃「…………そなた?」ズイッ
P「! な、なんだ!?」ビクッ
芳乃「今、そなたから良くない気を感じましたー。身に覚えはありませぬかー?」
P「――!」
……この子
P「……いや、何もないよ」ニコッ
芳乃「……そうですかー」
……今は、神がどうのこうの気にしている場合じゃないな。俺の目的は、あくまでも“彼女”だ。
彼女が普通の少女ではないことは、確かみたいだしな。
……なら。
21 2018/12/07(金) 22:35:58
芳乃「それでー、そなたの願いを聞かせてもらえませぬかー?」
P「……君が、欲しい」
こっちも直球でいかせてもらう。
芳乃「――え」
P「俺は、君をここから連れ出したい。その為にここまで来た」
芳乃「…………それは、まことですか…?」
P「ああ」
芳乃「………なぜ」
P「俺が、そうしたいと思ったからだ」
芳乃「…………」
P「俺の名前はP。依田…芳乃さん。貴方を我が社のアイドルにスカウトします」スッ
芳乃「あいどる…とは…?」
P「そうだな……一言で表すなら、“偶像”かな。民衆のあこがれ、崇拝…その対象となるものだ」
神様なんざ信じちゃいない……でも、彼女なら間違いなくなれるはずだ。誰からも愛される……神秘的なアイドルに。
芳乃「……ふふっ、なるほどー、そういうことですかー。やはり、わたくしの運命はそなたで間違いないようですー」
P「……君が、欲しい」
こっちも直球でいかせてもらう。
芳乃「――え」
P「俺は、君をここから連れ出したい。その為にここまで来た」
芳乃「…………それは、まことですか…?」
P「ああ」
芳乃「………なぜ」
P「俺が、そうしたいと思ったからだ」
芳乃「…………」
P「俺の名前はP。依田…芳乃さん。貴方を我が社のアイドルにスカウトします」スッ
芳乃「あいどる…とは…?」
P「そうだな……一言で表すなら、“偶像”かな。民衆のあこがれ、崇拝…その対象となるものだ」
神様なんざ信じちゃいない……でも、彼女なら間違いなくなれるはずだ。誰からも愛される……神秘的なアイドルに。
芳乃「……ふふっ、なるほどー、そういうことですかー。やはり、わたくしの運命はそなたで間違いないようですー」
22 2018/12/07(金) 22:37:03
P「……引き受けて…くれるのか?」
芳乃「はいー、みなを幸せにする“あいどる”…まさしく、それこそがわたくしの役目なのでしてー」
P「そうか……ありがとう」
芳乃「ただし……ひとつ、お約束して欲しいことがありますー」
P「なんだ…?」
芳乃「いつ、いかなる時でも、わたくしと共に歩み、支え、導いてほしいのですー」
P「……ああ、わかった。約束する」
芳乃「ふふー、それでは……」スッ
……?
芳乃「んっ…」チュ~
P「んむ!?」
芳乃「っん…んむっ…はぁ…んんっ…」
P「んー!んー!」
芳乃「ん~……ぷはぁ………ふぅ…」
P「…っはぁ、い、一体何を」ドキドキ
芳乃「誓いの口付けです……わたくし芳乃は、最後までそなたの傍にいることを…お約束するのでして……」
P「えっ、はっ、へ…?」
芳乃「以後、よろしくお願いしますー、そなた…♪」
芳乃「はいー、みなを幸せにする“あいどる”…まさしく、それこそがわたくしの役目なのでしてー」
P「そうか……ありがとう」
芳乃「ただし……ひとつ、お約束して欲しいことがありますー」
P「なんだ…?」
芳乃「いつ、いかなる時でも、わたくしと共に歩み、支え、導いてほしいのですー」
P「……ああ、わかった。約束する」
芳乃「ふふー、それでは……」スッ
……?
芳乃「んっ…」チュ~
P「んむ!?」
芳乃「っん…んむっ…はぁ…んんっ…」
P「んー!んー!」
芳乃「ん~……ぷはぁ………ふぅ…」
P「…っはぁ、い、一体何を」ドキドキ
芳乃「誓いの口付けです……わたくし芳乃は、最後までそなたの傍にいることを…お約束するのでして……」
P「えっ、はっ、へ…?」
芳乃「以後、よろしくお願いしますー、そなた…♪」
23 2018/12/07(金) 22:38:02
なんとか探し求めていたトップアイドルの卵を見つけ、スカウトすることができた俺。だが予想以上に時間が掛かってしまった為、気が付くと日が沈み始めていた。
日が完全に沈むと、暗くて周囲がほとんど見えなくなる。そうなる前に戻った方がいいということなので、芳乃に付き添われて森を抜けることになった。
森を抜け、視界が広がる。前方になだらかな石段が見えた。そこを登っていったところに、芳乃の住居があるという。
P(……なんだろう、妙に懐かしい感じがする)キョロキョロ
生まれてこの方、鹿児島の…それも離島になど来たこともないはずだ。なのに、なぜこんなにも既視感を感じているのだろうか。
「そなたー?」
P「あっ、悪い!今行く!」タッタッタ
日が完全に沈むと、暗くて周囲がほとんど見えなくなる。そうなる前に戻った方がいいということなので、芳乃に付き添われて森を抜けることになった。
森を抜け、視界が広がる。前方になだらかな石段が見えた。そこを登っていったところに、芳乃の住居があるという。
P(……なんだろう、妙に懐かしい感じがする)キョロキョロ
生まれてこの方、鹿児島の…それも離島になど来たこともないはずだ。なのに、なぜこんなにも既視感を感じているのだろうか。
「そなたー?」
P「あっ、悪い!今行く!」タッタッタ
24 2018/12/07(金) 22:40:02
~芳乃家 玄関前~
芳乃「ここが、わたくしの家屋でしてー」
P「ここが芳乃の家……」
案内されたのは古い木造建築の家。東京ではまず見かけないような趣のある建物だった。
芳乃の話によると、ここで“ばばさま”と二人で生活しているそうだ。
芳乃「今、ばばさまをお呼びしますー、少々お待ちをー」ガラガラ
P「ああ」
P(……綺麗な場所だな)クルッ
ここは島一番の高台に位置しているらしく、島全体を見渡すことができる。
沈みかけの夕日が非常に美しくみえた。
「気に入りましたか?」
P「え…?」
ふと後ろから声を掛けられ、振り向く。そこには…
「遠路遥々よく来てくれましたね。ようこそ、繋想島へ」
P「あっ、ど、どうもはじめまして。Pといいます……もしかして、芳乃さんのご祖母様でしょうか?」
ばばさま「ん~ そうですね。そういうことにしておきましょう」
……?
ばばさま「そう…貴方が……」ジー
P「あの…?」
ばばさま「ふふっ、ごめんなさい。なんだか、感慨深い気持ちになってしまって」ニコニコ
ばばさま「お疲れでしょう?是非上がって、ゆっくりしていってください。歓迎しますよ」
P「あ、ありがとうございます」
芳乃「ここが、わたくしの家屋でしてー」
P「ここが芳乃の家……」
案内されたのは古い木造建築の家。東京ではまず見かけないような趣のある建物だった。
芳乃の話によると、ここで“ばばさま”と二人で生活しているそうだ。
芳乃「今、ばばさまをお呼びしますー、少々お待ちをー」ガラガラ
P「ああ」
P(……綺麗な場所だな)クルッ
ここは島一番の高台に位置しているらしく、島全体を見渡すことができる。
沈みかけの夕日が非常に美しくみえた。
「気に入りましたか?」
P「え…?」
ふと後ろから声を掛けられ、振り向く。そこには…
「遠路遥々よく来てくれましたね。ようこそ、繋想島へ」
P「あっ、ど、どうもはじめまして。Pといいます……もしかして、芳乃さんのご祖母様でしょうか?」
ばばさま「ん~ そうですね。そういうことにしておきましょう」
……?
ばばさま「そう…貴方が……」ジー
P「あの…?」
ばばさま「ふふっ、ごめんなさい。なんだか、感慨深い気持ちになってしまって」ニコニコ
ばばさま「お疲れでしょう?是非上がって、ゆっくりしていってください。歓迎しますよ」
P「あ、ありがとうございます」
25 2018/12/07(金) 22:41:36
~芳乃家 食卓~
ばばさま「芳乃、Pさんをお連れしましたよ」
P「お邪魔します…」
芳乃の祖母に家の中へ案内された俺。居間に入ると、美味しそうな夕飯の香りが漂ってきた。
食卓の方に顔を向けると、芳乃が3人分の食事を用意して待っていた。
芳乃「はいー、お待ちしておりましたー」パタパタ
P「3人分?どうして……?」
芳乃「まぁまぁ、良いではありませぬかー」グイッグイッ
P「あっ、ちょっと…」グ~
芳乃「ほらー」クスクス
ばばさま「募る話もあるでしょうけど、先ずはお腹いっぱいになってから、ですよ」
P「……お気遣い、ありがとうございます」カアァ
そんなこんなで、芳乃家に夕飯をごちそうしてもらうことになった俺。
普段から大したものを食べてなかった俺にとって、温もりのこもった家庭料理はこの世のどんな物よりも美味しく感じられた。
………家族、か
ばばさま「芳乃、Pさんをお連れしましたよ」
P「お邪魔します…」
芳乃の祖母に家の中へ案内された俺。居間に入ると、美味しそうな夕飯の香りが漂ってきた。
食卓の方に顔を向けると、芳乃が3人分の食事を用意して待っていた。
芳乃「はいー、お待ちしておりましたー」パタパタ
P「3人分?どうして……?」
芳乃「まぁまぁ、良いではありませぬかー」グイッグイッ
P「あっ、ちょっと…」グ~
芳乃「ほらー」クスクス
ばばさま「募る話もあるでしょうけど、先ずはお腹いっぱいになってから、ですよ」
P「……お気遣い、ありがとうございます」カアァ
そんなこんなで、芳乃家に夕飯をごちそうしてもらうことになった俺。
普段から大したものを食べてなかった俺にとって、温もりのこもった家庭料理はこの世のどんな物よりも美味しく感じられた。
………家族、か
26 2018/12/07(金) 22:42:43
芳乃「粗茶ですがー」コトッ
P「ありがとう。いただきます」ズズズ
P「うん…結構なお手前で」フゥ
芳乃「ふふふー…どういたしまして、でしてー」ストッ
ばばさま「さて、お腹も膨れたことですし、始めましょうか?」
P「は、はい…!」
遂に、この時が来た…!
未成年の子をアイドルとしてスカウトする際、必ず必要となるのが保護者の了承である。
女の子本人がアイドルになることを望んでいても、親御さんが認めない限り、プロデュースすることは認められない。
ある意味、一番の障害ともいえるだろう。
P「では改めて……私はこういう者です」スッ
ばばさま「これはご丁寧にありがとうございます。ええっと…346ぷろだくしょん 第2芸能課所属 しんでれらぷろじぇくと企画担当……」
P「今日は芳乃さんを我が社のアイドルにすべく、ご挨拶に伺った次第です」
ばばさま「あいどる………歌や踊りによって、民衆の望む姿で在り続ける“偶像”。といったものでしょうか…?」
P「そうです。彼女……芳乃さんなら、間違いなく素晴らしいアイドルになれる…私はそう確信しています」
ばばさま「…………やはり、行き着く場所は……同じなのですね」ボソッ
P「……?」
P「ありがとう。いただきます」ズズズ
P「うん…結構なお手前で」フゥ
芳乃「ふふふー…どういたしまして、でしてー」ストッ
ばばさま「さて、お腹も膨れたことですし、始めましょうか?」
P「は、はい…!」
遂に、この時が来た…!
未成年の子をアイドルとしてスカウトする際、必ず必要となるのが保護者の了承である。
女の子本人がアイドルになることを望んでいても、親御さんが認めない限り、プロデュースすることは認められない。
ある意味、一番の障害ともいえるだろう。
P「では改めて……私はこういう者です」スッ
ばばさま「これはご丁寧にありがとうございます。ええっと…346ぷろだくしょん 第2芸能課所属 しんでれらぷろじぇくと企画担当……」
P「今日は芳乃さんを我が社のアイドルにすべく、ご挨拶に伺った次第です」
ばばさま「あいどる………歌や踊りによって、民衆の望む姿で在り続ける“偶像”。といったものでしょうか…?」
P「そうです。彼女……芳乃さんなら、間違いなく素晴らしいアイドルになれる…私はそう確信しています」
ばばさま「…………やはり、行き着く場所は……同じなのですね」ボソッ
P「……?」
27 2018/12/07(金) 22:43:19
ばばさま「芳乃」
芳乃「はい」
ばばさま「貴方が向かおうとしているのは、“永遠への旅路”です……それでも、貴方は進むのですか?」
芳乃「ええ」
ばばさま「……どうしようもない、“宿命”が待っているとしても…?」
芳乃「……みなを幸せにするのが、わたくしの望みであり務め。この者は誰かを幸せにする代償を背負いし人…。ならば、わたくしのとるべき道はひとつでしょうー」
ばばさま「…………そう」
ばばさま「Pさん」
P「はい」
ばばさま「芳乃を……どうか、よろしくお願いします」
P「………はい!」
こうして、芳乃はアイドルとしての道を歩むことになった。
芳乃「はい」
ばばさま「貴方が向かおうとしているのは、“永遠への旅路”です……それでも、貴方は進むのですか?」
芳乃「ええ」
ばばさま「……どうしようもない、“宿命”が待っているとしても…?」
芳乃「……みなを幸せにするのが、わたくしの望みであり務め。この者は誰かを幸せにする代償を背負いし人…。ならば、わたくしのとるべき道はひとつでしょうー」
ばばさま「…………そう」
ばばさま「Pさん」
P「はい」
ばばさま「芳乃を……どうか、よろしくお願いします」
P「………はい!」
こうして、芳乃はアイドルとしての道を歩むことになった。
28 2018/12/07(金) 22:44:17
~翌日~
まだ日も上がっていない早朝、あの方は既に船の中で待っている最中、わたくしは、ばばさまと過ごす“最後”の時間を過ごしていました。
ばばさま「芳乃、貴方に一族が代々受けづいてきた“願い”を伝えます。……これが、貴方に告げる“最後”の言葉となるでしょう。しっかり聴くのですよ」
芳乃「……」コクッ
ばばさま「人との繋がりを大切にしなさい。一生を悔いのないよう、精一杯生きなさい。そして……」
ばばさま「焦がれるような、恋をしなさい」
芳乃「恋……?」
ばばさま「ええ…その人になら、全てを捧げてもいいと思える……そんな“恋”です」
芳乃「………よくわかりませぬー」
ばばさま「ふふっ、大丈夫ですよ、芳乃にも理解できる日がきっと訪れます。だって貴方はもう…」
まだ日も上がっていない早朝、あの方は既に船の中で待っている最中、わたくしは、ばばさまと過ごす“最後”の時間を過ごしていました。
ばばさま「芳乃、貴方に一族が代々受けづいてきた“願い”を伝えます。……これが、貴方に告げる“最後”の言葉となるでしょう。しっかり聴くのですよ」
芳乃「……」コクッ
ばばさま「人との繋がりを大切にしなさい。一生を悔いのないよう、精一杯生きなさい。そして……」
ばばさま「焦がれるような、恋をしなさい」
芳乃「恋……?」
ばばさま「ええ…その人になら、全てを捧げてもいいと思える……そんな“恋”です」
芳乃「………よくわかりませぬー」
ばばさま「ふふっ、大丈夫ですよ、芳乃にも理解できる日がきっと訪れます。だって貴方はもう…」
29 2018/12/07(金) 22:44:40
その手に“運命”を掴んでいるのですから
30 2018/12/07(金) 22:45:09
ばばさま「……行きましたか」
この先、あの子には様々な出来事や新たな出会いが待ち受けているでしょう。そのひとつひとつがあの子の経験となり、糧となるはずです。
……辛いことや、悲しいことだって、あるかもしれない。でも大丈夫。だって、あの子の傍にはいつだって“彼の者”がいるだろうから。
ばばさま「母上の言った通りでした。……きっと、“父上”もそうだったのでしょうね」
母上と父上、二人の間に生まれた子…それが私です。彼らが再び巡り合うのを見届けた今、私の役目は終わりました。
ばばさま「Pさん……芳乃……」
願わくば、二人の未来に幸あらんことを――
この先、あの子には様々な出来事や新たな出会いが待ち受けているでしょう。そのひとつひとつがあの子の経験となり、糧となるはずです。
……辛いことや、悲しいことだって、あるかもしれない。でも大丈夫。だって、あの子の傍にはいつだって“彼の者”がいるだろうから。
ばばさま「母上の言った通りでした。……きっと、“父上”もそうだったのでしょうね」
母上と父上、二人の間に生まれた子…それが私です。彼らが再び巡り合うのを見届けた今、私の役目は終わりました。
ばばさま「Pさん……芳乃……」
願わくば、二人の未来に幸あらんことを――
31 2018/12/07(金) 22:46:33
船や飛行機……様々な移動手段を使って、東京へと向かった俺と芳乃。
生まれてこの方、繋想島から出たことがなかったらしい芳乃は、目に映るもの全てに目を輝かせていた。
紆余曲折しながらも、無事東京に着いた俺達。まず最初に、今後住むことになるであろう女子寮へ向かおうと考えていたのだが……連絡が遅れてしまっていた為、芳乃の部屋の準備が完了するのは夕方になるらしかった。
幸い、芳乃が持ってきた荷物はさほど多くは無かったので、そのまま事務所へ向かうことになった。
生まれてこの方、繋想島から出たことがなかったらしい芳乃は、目に映るもの全てに目を輝かせていた。
紆余曲折しながらも、無事東京に着いた俺達。まず最初に、今後住むことになるであろう女子寮へ向かおうと考えていたのだが……連絡が遅れてしまっていた為、芳乃の部屋の準備が完了するのは夕方になるらしかった。
幸い、芳乃が持ってきた荷物はさほど多くは無かったので、そのまま事務所へ向かうことになった。
32 2018/12/07(金) 22:47:34
~346プロ 第2芸能課~
P「新しく第2芸能課の所属アイドルになる依田芳乃さんだ。今後、一緒になることも多いと思う……よろしくしてやってくれ」
芳乃「わたくし依田は芳乃と申しましてー、あいどるとして、みなと共に高みへ登っていきたいと思ってますー、よろしくお願いいたしますー」
紗枝「うち、小早川紗枝―言います。こちらこそ、よろしゅうお願いします~」
紗枝「それにしても……ホンマに見つけてきたんやなぁ。ぷろでゅーさーはん」
P「どういう意味だよ、それ」
紗枝「昨日、いくら連絡しても繋がらへんかったし……またどこかで、倒れてもうているんちゃうかって、不安でたまらへんかったんよ…?」
P「ま、まさかぁ、そんなわけ……」タラー
芳乃「そなた…わたくしと出会った時、生き倒れておりましたよねー?」
P「芳乃!?それは言わない約束だっただろ…!?」ガーン
紗枝「や、やっぱり…!ぷろでゅーさーはん!ちゃんと食事を取らへんさかい、そうなるんどす!」プンプン
P「い、いや、朝はしっかり食べていたんだけどな…?」アセアセ
紗枝「それで昼を抜いていたら意味があらへんやないどすか!」
P「うぐっ、す、すまん…」
芳乃「ふふふー」
紗枝「あっ……み、見苦しいところをお見せしてもうた…かんにんな~///」
芳乃「いえー、お二人ともとても仲睦まじいご様子……少し妬いてしまいそうでしてー」クスクス
紗枝「うう…///」カアァ
芳乃「でもー……」スタスタ ギュッ
P「新しく第2芸能課の所属アイドルになる依田芳乃さんだ。今後、一緒になることも多いと思う……よろしくしてやってくれ」
芳乃「わたくし依田は芳乃と申しましてー、あいどるとして、みなと共に高みへ登っていきたいと思ってますー、よろしくお願いいたしますー」
紗枝「うち、小早川紗枝―言います。こちらこそ、よろしゅうお願いします~」
紗枝「それにしても……ホンマに見つけてきたんやなぁ。ぷろでゅーさーはん」
P「どういう意味だよ、それ」
紗枝「昨日、いくら連絡しても繋がらへんかったし……またどこかで、倒れてもうているんちゃうかって、不安でたまらへんかったんよ…?」
P「ま、まさかぁ、そんなわけ……」タラー
芳乃「そなた…わたくしと出会った時、生き倒れておりましたよねー?」
P「芳乃!?それは言わない約束だっただろ…!?」ガーン
紗枝「や、やっぱり…!ぷろでゅーさーはん!ちゃんと食事を取らへんさかい、そうなるんどす!」プンプン
P「い、いや、朝はしっかり食べていたんだけどな…?」アセアセ
紗枝「それで昼を抜いていたら意味があらへんやないどすか!」
P「うぐっ、す、すまん…」
芳乃「ふふふー」
紗枝「あっ……み、見苦しいところをお見せしてもうた…かんにんな~///」
芳乃「いえー、お二人ともとても仲睦まじいご様子……少し妬いてしまいそうでしてー」クスクス
紗枝「うう…///」カアァ
芳乃「でもー……」スタスタ ギュッ
33 2018/12/07(金) 22:49:11
P「よ、芳乃…?」
紗枝「え」
芳乃「この者は、わたくしの“運命”のお方ですのでー、誰にも譲らないのでしてー♪」ギュゥー
P「な、何を言ってるんだ…!?」
芳乃「繋想島での誓いの口づけ…忘れたとは言わせませんよー?」クスッ
P「……っ」カアァ
紗枝「く、くくく口づけ……!?」
芳乃「身も心も蕩けるような、情熱的な口づけ……まこと、素敵でしたー」ポッ
紗枝「Pはん!?何してはるん!?あいどるのすかうとやのうて、おなごを口説きに行ってたんどすかっ!?」ガシッ
P「いやいやいやいやいや、そんなわけないだろっ…!」アセアセ
紗枝「彼女が嘘をついてる言い張るん!?」
P「………いや、まぁ……嘘では…ない……かな…?」ダラダラ
芳乃「事実でしてー♪」
紗枝「Pはん……!うちという女が居ながら、浮気ってどないなつもりどすかっ!!!」
P「ま、待て!誤解だ!俺から手を出したわけじゃ……そもそも、別に俺と紗枝はそういう関係じゃないだろ!?」
紗枝「……っ」ジワッ
P「紗枝…?ど、どうしたんだ…?」
紗枝「え」
芳乃「この者は、わたくしの“運命”のお方ですのでー、誰にも譲らないのでしてー♪」ギュゥー
P「な、何を言ってるんだ…!?」
芳乃「繋想島での誓いの口づけ…忘れたとは言わせませんよー?」クスッ
P「……っ」カアァ
紗枝「く、くくく口づけ……!?」
芳乃「身も心も蕩けるような、情熱的な口づけ……まこと、素敵でしたー」ポッ
紗枝「Pはん!?何してはるん!?あいどるのすかうとやのうて、おなごを口説きに行ってたんどすかっ!?」ガシッ
P「いやいやいやいやいや、そんなわけないだろっ…!」アセアセ
紗枝「彼女が嘘をついてる言い張るん!?」
P「………いや、まぁ……嘘では…ない……かな…?」ダラダラ
芳乃「事実でしてー♪」
紗枝「Pはん……!うちという女が居ながら、浮気ってどないなつもりどすかっ!!!」
P「ま、待て!誤解だ!俺から手を出したわけじゃ……そもそも、別に俺と紗枝はそういう関係じゃないだろ!?」
紗枝「……っ」ジワッ
P「紗枝…?ど、どうしたんだ…?」
34 2018/12/07(金) 22:50:01
紗枝「P、Pはんが、う、うちのこと、何とも想っ、グスッ、想ってないって、ひっく、言うからぁ」ポロポロ
P「そ、そんなことは言ってないだろっ」アセアセ
芳乃「あー、泣かせたー、でしてー」
P「よ、芳乃ぉ…」
紗枝「Pはんのばか、あほ、おたんこなすっ、うちがどれだけ心配したと思てるんどすかぁ…」ポロポロ
P「わ、悪かった、俺が悪かったから、許してくれ……な?」ナデナデ
紗枝「ううっ…」ギュゥー
芳乃「……」
芳乃(やはり……そなたは、“多くの”女性に…想われているのでして……)ズキッ
芳乃「……はて?」
P「そ、そんなことは言ってないだろっ」アセアセ
芳乃「あー、泣かせたー、でしてー」
P「よ、芳乃ぉ…」
紗枝「Pはんのばか、あほ、おたんこなすっ、うちがどれだけ心配したと思てるんどすかぁ…」ポロポロ
P「わ、悪かった、俺が悪かったから、許してくれ……な?」ナデナデ
紗枝「ううっ…」ギュゥー
芳乃「……」
芳乃(やはり……そなたは、“多くの”女性に…想われているのでして……)ズキッ
芳乃「……はて?」
35 2018/12/07(金) 22:51:04
こうして、わたくしは“あいどる”としての道を歩み始めることになったのです。
東京での生活は目新しいものばかりでした。
紗枝さんをはじめとする、数多くの“あいどる”の方々が住む女子寮、今まで通ったことのなかった学び舎、日々を送る上で必要となる品の数々が揃っている“すーぱー”や“こんびに”などなど……
毎日が驚きと初めての連続だったのです。
東京での生活は目新しいものばかりでした。
紗枝さんをはじめとする、数多くの“あいどる”の方々が住む女子寮、今まで通ったことのなかった学び舎、日々を送る上で必要となる品の数々が揃っている“すーぱー”や“こんびに”などなど……
毎日が驚きと初めての連続だったのです。
36 2018/12/07(金) 22:52:47
芳乃「いちー、にー、さんー、しー。みーぎー、ひだりー……たーん、いざー」
芳乃と俺、二人だけのレッスンが始まった。
最初はトレーナーさんではなく、俺が直接みることになった。
芳乃に合ったレッスン内容をトレーナーさん方に伝える為、彼女が現時点でどのくらい動けるのかを把握する必要があると思ったからだ。
芳乃「いかがでしょうー?」
P「驚いたな…どうしてそんなに上手なんだ?」
芳乃「それはー求める音色が聞こえるからでしてー。くわえましてー、昨夜は流れる星が告げたのですー。ゆえにこれはー、わたくしの力というよりもー……」
芳乃「この曲を作ったものの願いとー、この曲を振り付けした振り付け師の願いとー、それらを束ねるものの願いが集いましてー……」
P「………?」
芳乃「おやまー。不思議そうな顔をなさってー どうかいたしましたかー?」
P「いや…君の言ってることがよくわからなくて」
芳乃「それはそれはー。しかしながらー 物事のすべてをー 理解するのにはー 長き年月がかかるものでしょうー」
芳乃「わたくしもー いまだ修行中の身ゆえー。しかしながらー 大切なことを見失わなければー 必ずやー 理解することができると教えられましてー」
P「大切な…こと」
芳乃「そなたにとって大切なことー、それはわたくしがー そなたにとってどのような存在かー。それは、いかなる形をしていましてー?」
ああ…そういうことか、それならハッキリしている。俺が彼女に対して求めること…それは
P「アイドルだ」
芳乃「そうー。依田の芳乃はー そなたがぷろでゅーすする“あいどる“になるでしょうー」ニコッ
P「!」ドキッ
芳乃「その想いさえあればー、おのずとー 理解できる日がくるでしょー。その日までー、手に手を添えー、ともにまいりましょうー」スッ
P「……そうだな」スッ
芳乃の手を取る。彼女の手は小さくて、柔らかくて……とても温かかった。
芳乃「……♪」
芳乃と俺、二人だけのレッスンが始まった。
最初はトレーナーさんではなく、俺が直接みることになった。
芳乃に合ったレッスン内容をトレーナーさん方に伝える為、彼女が現時点でどのくらい動けるのかを把握する必要があると思ったからだ。
芳乃「いかがでしょうー?」
P「驚いたな…どうしてそんなに上手なんだ?」
芳乃「それはー求める音色が聞こえるからでしてー。くわえましてー、昨夜は流れる星が告げたのですー。ゆえにこれはー、わたくしの力というよりもー……」
芳乃「この曲を作ったものの願いとー、この曲を振り付けした振り付け師の願いとー、それらを束ねるものの願いが集いましてー……」
P「………?」
芳乃「おやまー。不思議そうな顔をなさってー どうかいたしましたかー?」
P「いや…君の言ってることがよくわからなくて」
芳乃「それはそれはー。しかしながらー 物事のすべてをー 理解するのにはー 長き年月がかかるものでしょうー」
芳乃「わたくしもー いまだ修行中の身ゆえー。しかしながらー 大切なことを見失わなければー 必ずやー 理解することができると教えられましてー」
P「大切な…こと」
芳乃「そなたにとって大切なことー、それはわたくしがー そなたにとってどのような存在かー。それは、いかなる形をしていましてー?」
ああ…そういうことか、それならハッキリしている。俺が彼女に対して求めること…それは
P「アイドルだ」
芳乃「そうー。依田の芳乃はー そなたがぷろでゅーすする“あいどる“になるでしょうー」ニコッ
P「!」ドキッ
芳乃「その想いさえあればー、おのずとー 理解できる日がくるでしょー。その日までー、手に手を添えー、ともにまいりましょうー」スッ
P「……そうだな」スッ
芳乃の手を取る。彼女の手は小さくて、柔らかくて……とても温かかった。
芳乃「……♪」
37 2018/12/07(金) 22:53:26
それからも、俺と彼女は行動を共にした。宣材写真の撮影、今後お世話になるであろう人達への挨拶回り……
一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、俺は彼女の魅力に惹かれていった。
P(不思議な子だな……)
そして遂に彼女にも訪れた…アイドルとして花開く、その時が。
一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、俺は彼女の魅力に惹かれていった。
P(不思議な子だな……)
そして遂に彼女にも訪れた…アイドルとして花開く、その時が。
38 2018/12/07(金) 22:55:13
~346プロ 第2芸能課~
芳乃「でびゅーらいぶ……でしてー?」
P「ああ、芳乃のデビューが決まったんだ。……来るんだよ、芳乃が大勢のファンの前で輝く瞬間が」
芳乃「ほー、それは…まことに嬉しいことでしてー♪」
P「期日は今日から3週間後……いけるな」
芳乃「はいー。そなたとわたくし、二人で叶えましょー。光溢れる舞台の上で花開く、その夢をー」
芳乃「でびゅーらいぶ……でしてー?」
P「ああ、芳乃のデビューが決まったんだ。……来るんだよ、芳乃が大勢のファンの前で輝く瞬間が」
芳乃「ほー、それは…まことに嬉しいことでしてー♪」
P「期日は今日から3週間後……いけるな」
芳乃「はいー。そなたとわたくし、二人で叶えましょー。光溢れる舞台の上で花開く、その夢をー」
39 2018/12/07(金) 22:56:04
あの方からでびゅーすることを告げられ、年甲斐もなく心が躍ってしまったわたくし。
本番までの数週間、とれーなーの方々と共に、多くのれっすんに励みました。
同じくあの方の担当あいどるである紗枝さんや、女子寮の皆々も応援してくれました。
たくさんの人々に支えられ、でびゅーを目指す……素晴らしき日々です。
本番までの数週間、とれーなーの方々と共に、多くのれっすんに励みました。
同じくあの方の担当あいどるである紗枝さんや、女子寮の皆々も応援してくれました。
たくさんの人々に支えられ、でびゅーを目指す……素晴らしき日々です。
40 2018/12/07(金) 22:57:48
~デビュー当日 ライブ会場~
P「なんですって!?それは本当ですか!?」
スタッフ「はい…!強風の影響で、最寄駅までの電車が完全にストップしているとの連絡がありました!」
P「そんな…今日に限ってどうして……!」
芳乃のデビューライブ当日、開演まであと僅かという時に届けられた凶報。それは、台風の影響で電車の遅延が発生し、来場者の多くが足止めを食らっているといったものだった。
芳乃「なにやら騒がしいようですが、どうなさいましたかー?」スタスタ
スタッフ「依田さん!それが…今日来る予定だったお客さんたちの乗った電車が、強風のせいで動けないでいるんです!このままじゃ、今日のライブが中止になってしまうかも…!」
芳乃「…!」
スタッフ「プロデューサーさん!俺、ライブの時間を少しでも遅らせることができないか、上と掛け合ってきます!」
P「すいません!よろしくお願いします…!」
芳乃(……わたくしの“力”を使えば…この空を…)
芳乃「…………っ」ダッ
P「待って」パシッ
芳乃「……そなた」
P「どこに行こうとしているんだ?芳乃はライブの準備をしていてくれ」
P「なんですって!?それは本当ですか!?」
スタッフ「はい…!強風の影響で、最寄駅までの電車が完全にストップしているとの連絡がありました!」
P「そんな…今日に限ってどうして……!」
芳乃のデビューライブ当日、開演まであと僅かという時に届けられた凶報。それは、台風の影響で電車の遅延が発生し、来場者の多くが足止めを食らっているといったものだった。
芳乃「なにやら騒がしいようですが、どうなさいましたかー?」スタスタ
スタッフ「依田さん!それが…今日来る予定だったお客さんたちの乗った電車が、強風のせいで動けないでいるんです!このままじゃ、今日のライブが中止になってしまうかも…!」
芳乃「…!」
スタッフ「プロデューサーさん!俺、ライブの時間を少しでも遅らせることができないか、上と掛け合ってきます!」
P「すいません!よろしくお願いします…!」
芳乃(……わたくしの“力”を使えば…この空を…)
芳乃「…………っ」ダッ
P「待って」パシッ
芳乃「……そなた」
P「どこに行こうとしているんだ?芳乃はライブの準備をしていてくれ」
41 2018/12/07(金) 23:00:30
芳乃「……みなみなが困っていますのにー わたくしだけ、何もしないわけにはいきませぬー。困った人々を助けるのは、依田の家の者の務めゆえー」
P「何もしないなんて…そんなことはない。君にしかできないことがある」
芳乃「わたくしにしかできないこと……?」
P「……今の君は“アイドル”だ。かんなぎでも、拝み屋でもない……この世界にたった一人しか存在しない、アイドル“依田芳乃”なんだ」
芳乃「!」ハッ
P「時間に関しては、俺達がなんとかする。君はライブ本番のことだけを考えていてくれ」
芳乃「……依田の芳乃はー、そなたが ぷろでゅーす する“あいどる”になるとー、たしかに誓いましたー」
芳乃「そなたのお心、受け取りましてー。それでは、わたくしは準備を進めましょー」
P「すまない…よろしく頼む」
芳乃「そなた……“信じて”ますよ」
P「……ああ!」
P「何もしないなんて…そんなことはない。君にしかできないことがある」
芳乃「わたくしにしかできないこと……?」
P「……今の君は“アイドル”だ。かんなぎでも、拝み屋でもない……この世界にたった一人しか存在しない、アイドル“依田芳乃”なんだ」
芳乃「!」ハッ
P「時間に関しては、俺達がなんとかする。君はライブ本番のことだけを考えていてくれ」
芳乃「……依田の芳乃はー、そなたが ぷろでゅーす する“あいどる”になるとー、たしかに誓いましたー」
芳乃「そなたのお心、受け取りましてー。それでは、わたくしは準備を進めましょー」
P「すまない…よろしく頼む」
芳乃「そなた……“信じて”ますよ」
P「……ああ!」
42 2018/12/07(金) 23:01:05
スタッフの皆さんや俺が必死で動いた結果、なんとかライブ開始時間をずらすことができた。だが…
~1時間後~
スタッフ「交通機関は、まだ回復しないみたいですね……。そろそろ開場時間ですけど、このままじゃ……」
P「……芳乃は、どうしてますか?」
スタッフ「今は、リハが終わったので、着替えとメイクの時間ですね」
P「そうですか……ありがとうございます」
スタッフ「プロデューサーさんは?」
P「……祈るよ」
俺は、神様なんて不確かなモノ、今までずっと信じてこなかった……でも、今日ばかりは、どうか……!
~1時間後~
スタッフ「交通機関は、まだ回復しないみたいですね……。そろそろ開場時間ですけど、このままじゃ……」
P「……芳乃は、どうしてますか?」
スタッフ「今は、リハが終わったので、着替えとメイクの時間ですね」
P「そうですか……ありがとうございます」
スタッフ「プロデューサーさんは?」
P「……祈るよ」
俺は、神様なんて不確かなモノ、今までずっと信じてこなかった……でも、今日ばかりは、どうか……!
43 2018/12/07(金) 23:02:02
~さらに1時間後~
芳乃「………」
トントン
芳乃「どうぞー」
P「芳乃…」ガチャ
芳乃「そなたでしたかー」
P「大丈夫か?」
芳乃「ええ…心は穏やかにー……今の芳乃は“あいどる”ゆえにー、舞台に上がった時のことを、考えていますー。まだ見ぬ光の下に、立つときのことをー」
P「……そうか」
スタッフ「プロデューサーさん!交通機関、復旧したとのことです!お客さんが入り次第、始められます!」バタン
芳乃「!」
P「……っし!」グッ
芳乃「そなた…!」
P「お客さんが入り次第、始めましょう」
スタッフ「わかりました!」ダッ
芳乃「わたくしも、わかりましたー。衣装も、お化粧も、気持ちも準備できていましてー、いつでも、舞台へ立てますよー」
P「………芳乃、夢、叶えるぞ」
芳乃「……はいー!」
芳乃「………」
トントン
芳乃「どうぞー」
P「芳乃…」ガチャ
芳乃「そなたでしたかー」
P「大丈夫か?」
芳乃「ええ…心は穏やかにー……今の芳乃は“あいどる”ゆえにー、舞台に上がった時のことを、考えていますー。まだ見ぬ光の下に、立つときのことをー」
P「……そうか」
スタッフ「プロデューサーさん!交通機関、復旧したとのことです!お客さんが入り次第、始められます!」バタン
芳乃「!」
P「……っし!」グッ
芳乃「そなた…!」
P「お客さんが入り次第、始めましょう」
スタッフ「わかりました!」ダッ
芳乃「わたくしも、わかりましたー。衣装も、お化粧も、気持ちも準備できていましてー、いつでも、舞台へ立てますよー」
P「………芳乃、夢、叶えるぞ」
芳乃「……はいー!」
44 2018/12/07(金) 23:03:04
~舞台袖~
P「……いよいよだな」
芳乃「でして……」
舞台袖から観客席を覗きみる、そこには小さなライブ会場ながらも、多くのお客さんが来ていた。
P「……祈り…か」
芳乃「そなた…?」
P「……神様なんて不確かなモノに、依存しちゃいけない。未来も、願いも、幸せも、全て自分の力で掴み取らなきゃ意味がない。その考えは今でも変わらない…変えちゃいけないと思う」
芳乃「………」
P「でも……今日のライブは俺だけの力じゃどうにもならなかった。会場のスタッフ、お客さん、そして……芳乃、君がいたから……皆の祈りがあったからこそ、こうしてライブを始めることができたんだ」
芳乃「……ええ」
P「俺は神様なんて信じない……だから」
芳乃「だから……?」
P「……いよいよだな」
芳乃「でして……」
舞台袖から観客席を覗きみる、そこには小さなライブ会場ながらも、多くのお客さんが来ていた。
P「……祈り…か」
芳乃「そなた…?」
P「……神様なんて不確かなモノに、依存しちゃいけない。未来も、願いも、幸せも、全て自分の力で掴み取らなきゃ意味がない。その考えは今でも変わらない…変えちゃいけないと思う」
芳乃「………」
P「でも……今日のライブは俺だけの力じゃどうにもならなかった。会場のスタッフ、お客さん、そして……芳乃、君がいたから……皆の祈りがあったからこそ、こうしてライブを始めることができたんだ」
芳乃「……ええ」
P「俺は神様なんて信じない……だから」
芳乃「だから……?」
45 2018/12/07(金) 23:04:04
P「芳乃、君を信じることにした」
46 2018/12/07(金) 23:05:03
芳乃「――」
P「皆の幸せを誰よりも願っている……優しくて、温かくて、素敵な…かけがえのない、君を」
芳乃「……ふふっ、わたくしは“ただの”女の子ですよー?」クスクス
P「大切な担当アイドルのことを、何よりも信じる……神頼みするより、その方がプロデューサーらしくないか?」
芳乃「ええ……“そなた”らしいです」
スタッフ「依田さーん!スタンバイ、お願いしまーす!」
P「時間だ……いっておいで」
芳乃「……はい。いってきます」
P「皆の幸せを誰よりも願っている……優しくて、温かくて、素敵な…かけがえのない、君を」
芳乃「……ふふっ、わたくしは“ただの”女の子ですよー?」クスクス
P「大切な担当アイドルのことを、何よりも信じる……神頼みするより、その方がプロデューサーらしくないか?」
芳乃「ええ……“そなた”らしいです」
スタッフ「依田さーん!スタンバイ、お願いしまーす!」
P「時間だ……いっておいで」
芳乃「……はい。いってきます」
47 2018/12/07(金) 23:06:55
いまだ“あいどる”のことはよく知らない…でも、今わたくしの目の前に、ふぁんの方々が確かに存在する
彼ら一人一人の想いがわたくしの身体に……心に流れ込んでくる
芳乃(ばばさま。わたくし、とても……幸せです)
いつかは消えるこの身なれど、今だけは…この幸せを、享受したい
そなた…愛しいひと……ずっとお傍にいたいひと
芳乃(ああ……なるほど、これが…この気持ちが……)
彼ら一人一人の想いがわたくしの身体に……心に流れ込んでくる
芳乃(ばばさま。わたくし、とても……幸せです)
いつかは消えるこの身なれど、今だけは…この幸せを、享受したい
そなた…愛しいひと……ずっとお傍にいたいひと
芳乃(ああ……なるほど、これが…この気持ちが……)
48 2018/12/07(金) 23:07:23
“恋”なのですね
49 2018/12/07(金) 23:08:05
『何百年経とうとも、君のことを愛してる』
『ええ…また 逢いましょう』
『ええ…また 逢いましょう』
50 2018/12/07(金) 23:08:29
以上で終わりです。
しまむーのHOT LIMIT 最高でした。しまむら is GOD
ここまで読んでくれた皆さん。ありがとうございました!
しまむーのHOT LIMIT 最高でした。しまむら is GOD
ここまで読んでくれた皆さん。ありがとうございました!
引用元:http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1544188220/