92   2019/01/24(木) 20:39:40

--スピカプロダクション
ガヤガヤ

ちひろ「泰葉ちゃんと忍ちゃんが入って事務所が狭くなってきましたね」

P「そうですね。レッスンとかがあれば事務所に溜まる子も減るんでしょうけど、現状そんなお金は無いですし......」

ちひろ「ほたるちゃんのコネで来たお仕事も一段落しちゃいましたし、本格的に暇になりますね......。次のお仕事って何でしたっけ?」

P「......未定です」

ちひろ「......まあ、事務仕事は山ほどあるのでPさんに手伝ってもらえるのはありがたいですけど、アイドルの子たちに何もすることないのはモチベーションにも関わりますからどうにかしてあげませんと......」


93   2019/01/24(木) 20:40:32

プルルルルルルガチャッ

P「はい、スピカプロダクションです」

D「おお、この声はあの時のプロデューサーかな? この前の神社仏閣巡りの時のディレクターだよ」

P「道明寺の時のですか。その節はお世話になりました。この前放送されてましたけど、評判はどうでしたか?」

D「上々だったよ。『あの道明寺歌鈴って子は何者だ』って電話が数本あったけど、そっちには連絡来なかったのかい?」

P「来てないですね。まあ、うちはファンクラブもないですから仕方ないといえば仕方ないですけど」

D「そんなものなのか? まあいい、今回はそんなことを伝えるために電話したんじゃないんだ」

P「違うんですか? それじゃあ何を?」

D「何ってテレビ局の人間がプロダクションに連絡してるんだから仕事の依頼に決まってるだろう」

P「本当ですか!?」

D「ああ、しかも2つだ。1つ目は街ブラロケのゲストだな。今回は茨城県に行って適当に散歩する予定なんだ」

D「そこで的場梨沙ちゃんと工藤忍ちゃんを使わせてくれないか?梨沙ちゃんは物怖じしないで物が言える子だし、忍ちゃんはまだ関東には慣れてないだろうから面白い画が撮れると思うんだよなぁ」

P「はい! 喜んで! 撮影はいつになりそうですか?」

D「それが問題でね、もともと違う人にオファーしてたんだけど、その人に急な仕事が入っちゃってキャンセルになっちゃってね。その代役としてのオファーだから、あんまり時間がないんだ。2週間後ってのは大丈夫かい?」

P「大丈夫です! それで2つ目っていうのはどんなお仕事何ですか?」

D「こっちはすごいぞ。バラエティのミニコーナーレギュラーだ。しかもゴールデン。歌鈴ちゃんにお願いしたい」

P「ゴールデンのレギュラーですか!? 一体何でそんな大きな仕事をウチに......?」

D「さっきも言った通り歌鈴ちゃんが中々評判良くてね。知名度はまだまだだけどチャレンジしてみてもいいんじゃないかってなったんだ。ちなみにゲストを呼ぶこともあるんだけど、その枠におたくのアイドルを使うこともできると思う」

P「あ、ありがとうございます! そっちも受けさせていただきます!」

D「じゃあ決まりだな。歌鈴ちゃんの方はまだ先のことだからいいとして、とりあえずロケの資料を急ぎで発送するから、目を通しておいてくれよ」

P「はい! ありがとうございます!」


94   2019/01/24(木) 20:43:59

ガチャッ

ちひろ「今の電話、お仕事の話ですよね? レギュラーが決まったんですか!?」

梨沙「レギュラー!? それって本当!? 誰にオファーが来たの!?」

P「歌鈴だよ。一番最初の撮影はもう少し後だけど、その前に打ち合わせとかあるだろうから少し忙しくなるかもな」

梨沙「アタシの仕事はまだ無いの? 事務所に入ったのはアタシが2番目なのに仕事の数はみんなより少ないと思うんだけど! 努力が足りてないんじゃないの?」

P「そんな生意気なことを言う子には仕事はあげられないなぁ。せっかくオファーが来たのに、もったいないけど断るしかないかなぁ」

梨沙「えっ!? 嘘よ、嘘。何でもないから早く詳細教えなさい!」

P「冗談だよ。茨城で街ブラロケ、忍も一緒だ。名指しでのオファーだったから評価されてるってことかもな」

忍「私がテレビ......? 夢みたい......」

P「忍はこれが初仕事だな。みんなに同じこと言ってるけど、いつも通りやれば何の問題も無いはずだよ」

ちひろ「Pさん、少しお話があるんですが......」

P「いいですよ。何ですか?」

ちひろ「ウチの事務所、あのテレビ局に気に入られた感じじゃないですか。今回のゲストやレギュラーのお仕事以外にもたくさんのオファーが来るかもしれませんよ」

ちひろ「そうしたら事務所にはそれなりのお金が入りますし、場合によってはトレーナーさんを雇えるようになる可能性も出てくるんじゃ無いですか?」

P「確かにそうですね。歌鈴のコーナーに他の子をゲストでねじ込むこともできるって言ってましたし。じゃあ今のうちから安く請け負ってくれるトレーナーを探しておきます」

忍「レッスンもできるようになるの!? 本当にアイドルになったみたい......」

P「まあ、良い人が見つかればの話だけどな」
 


95   2019/01/24(木) 20:44:32

--2週間後
忍「うわぁ......。カメラも大きなマイクもある......。これが撮影現場なんだ......」

P「緊張してるのか?」

忍「ううん、緊張っていうよりかは感動って感じかな。アタシもアイドルになったんだなって」

梨沙「早く衣装に着替えて始めるわよ! 久しぶりのお仕事だし、気合い入れていくんだから!」

D「おっ、やる気十分って感じで頼もしいな。今日のトリは夜景だから楽しみにしててくれよ。それにしても突然の連絡で申し訳なかったね。スケジュールに問題はなかったのかい?」

梨沙「問題も何もそもそもお仕事が1つも決まってないからね!」

P「あんまりそういうことは大きな声で言わないでほしいかな......」

忍「まあまあ、Pさんも頑張ってるし、今回こうやってお仕事できるんだからいいじゃない」

D「おたくの懐事情は知らないけど、潰れない程度に頼むよ。せっかくウチが見つけた有望株なんだから」

P「......善処します」

D「よし、じゃあ準備できたら早速始めようか。今日は梨沙ちゃんがいるから21時までには撤収しないといけないからね」


96   2019/01/24(木) 20:45:10

--夜景撮影現場
忍「うわぁーーー!! すっごいキラキラしててキレイ!!」

梨沙「夜景なんて東京でも見れると思ってたけど、これは想像以上ね! パパにも見せてあげたかったわ」

D「早速で悪いけど撮影始めようか。もう8時回ってるし、エンディングのことを考えるとそんなに時間はかけられないぞ!」

P「すいません、ウチのアイドルが力不足で......」

D「あ、いや、そういう意味で言ったんじゃないんだ。二人とも頑張ってくれてるよ。それにまだ急げば間に合う時間だしな」

梨沙「時間ないんだったら早くやるわよ! アタシのせいで中途半端になったなんて言わせないんだから!」


97   2019/01/24(木) 20:45:33

--撮影終了後
D「よし、なんとかギリギリ9時前に終わったか。2人とも最後の方は駆け足になって悪かったね」

忍「大丈夫です! とっても楽しくて、あっという間でした!」

梨沙「アタシはカワイイところが撮れてれば問題ないわ!」

D「だったらばっちりだ! 2人とも今日はずっとかわいかったよ」

梨沙「......なに? アンタロリコンだったの?」

D「辛辣だなぁ。ところであまり急いでないみたいだけど、時間は大丈夫なのかい?」

P「時間? 撮影は終わりましたし、大丈夫ですよ?」

D「いや、そうじゃなくて、すぐにでも電車に乗らないと東京に着く頃には11時を過ぎるぞ。そうしたら深夜徘徊で補導されるんじゃないか?」

P「......忍! 梨沙! 急ぐぞ! ディレクターさんもありがとうございました!」

忍、梨沙「あ、ありがとうございました!」

D「はいよ、気をつけてな」
 


98   2019/01/24(木) 20:46:04

梨沙「で、結局間に合わないことが分かった訳だけど、どうするつもり?」

忍「タクシーでも捕まえて帰れないかな?」

P「出来ないこともないけど、経費で落ちるかは微妙なとこだな。中々高くなりそうだし。2人とも明日って何か用事あるか?」

梨沙「明日はないわね。パパが仕事で家にいないからせっかくの日曜日なのにどこにも行けないのよ」

忍「アタシも何も無いかな。まだこっちで一緒に遊びに行くような友達はいないから、しいて言えば事務所でおしゃべりするくらいだけど......。もしかしてここで一泊するつもり?」

P「ああ。仕方ないけどそうするのが一番だろう。親御さんには連絡しておくよ」

梨沙「アタシは自分でするからいいわよ! そんなことより、帰らないんだったらまだ時間あるでしょ? ちょっと遊んでいってもいいんじゃない?」

P「ダメだ。明日は朝一で帰るんだからな。疲れてるだろうし早く休んだ方がいい」

忍「ちょっとだけでもダメかな? 駅前ぶらつくくらいでいいから」

P「......そこまで言うなら仕方ないな。ちょっとだけだぞ」


99   2019/01/24(木) 20:46:39

--駅前
梨沙「駅前に来たはいいけど、これといってすることもないわね」

P「まあ、そんなもんだろう。そんなに大きな駅じゃないし。どうする? 散歩ぐらいしかできないけど」

忍「ねえ、あそこに人がいっぱいいるよ! 何かやってるんじゃない? 見に行こうよ!」

P「ストリートパフォーマンス的な何かじゃないか? よく聞くと音楽聞こえてくるし。梨沙は行きたいか?」

梨沙「もちろん! ダンスとかだったら嬉しいわね!」

P「そういえば梨沙はダンスが得意だったな」

梨沙「そういえばって何よ! 忘れてたの?」

P「いや、忘れてたわけじゃないけど、実際に見たことないからな。そんなことより早く行こう。終わっちゃうかもしれないぞ?」

忍「確かにそうだね。早く行こう!」
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100   2019/01/24(木) 20:47:44

ズンチャカズンチャカ

梨沙「やっぱりダンスだったわね! アタシも混ざってきていいかしら?」

P「駄目だからな? 邪魔するもんじゃない」

梨沙「ちぇっ、いいじゃない少しくらい」

忍「まあまあ、迷惑になってもいけないし、仕方ないよ。それよりすごいダンスだね。あんなに激しい振り付けなのに動きがピッタリで、息のあった仲間って感じ」

梨沙「そうね、みんな楽しそうだし、きっと、ずっと同じ仲間で踊ってきたのね」

P「......」

忍「どうしたの、プロデューサーさん?」

P「ああ、いや、ちょっと気になることがあってな」

梨沙「なに? またスカウトしようとしてるの?」

P「んー、ちょっと引っかかることがあるから、スカウトするならそれが解決してからだな」

忍「じゃあパフォーマンス終わったらその人に話しかけてみようよ」

P「そうだな。ちょっと時間かかるかもしれないけど、いいか?」

忍、梨沙「もちろん!」


101   2019/01/24(木) 20:48:16

パチパチパチ

梨沙「これで終わりよね。気になる人っていうのはどの人なの?」

P「あの端のほうにいるちょっと小さめの人だよ」

忍「もしかしてあの人? すごい綺麗な人だよね。アタシも気になってたんだ。おーい、そこのお姉さん! ちょっと質問してもいいかな? あ、いや、質問があるのはアタシじゃなくてこの人なんだけど......」

??「えっ、何? 何か用ですか?」

P「いや、怪しい者じゃないんだが、ちょっと気になることがあってな......」

??「まあ、ちょっとくらいならいいけど、気になったことって?」

P「君のダンス、素晴らしかった。あのグループでダンスが一番上手いのは素人目に見ても君だ。なのになぜそんな端でやってるんだ? センターに出ればもっと輝けるのに」

??「どうだっていいでしょ、そんなこと。アタシもいろいろ考えて迷惑にならないようにやってるんだから」

P「迷惑、ね。君がセンターになると誰に迷惑がかかるんだ?」

??「みんなだよ。アタシがセンターにいったらアタシだけが目立ってみんなが楽しくなくなるからね」

P「それで君は本当に満足してるのか?」

??「......もちろん。みんなが楽しく踊れるならそれが一番でしょ?」

P「そのみんなの中に君は入ってないんじゃないかな。少なくとも俺にはそう見えたけど」

??「それは......」

ダンサー「ちょっと聖來ー! 何してるのー! もうみんな飲み会行っちゃうよー!」

聖來「え? あっ、ちょっと待って! 今行くから! そういうわけだから、悪いけど行くね!」


102   2019/01/24(木) 20:48:38

梨沙「タイミング悪いわね......」

P「まあ、こんなこともあるさ。スカウト失敗で一々落ち込んでたらプロデューサーなんてやってられんからな。よし! そろそろいい時間だし、ホテル行くぞ! っていうか急がないと連絡した時間に間に合わないから走るぞ!」

忍「そんな! 撮影終わりで疲れてるのに!」

P「遊びたいって言った2人が悪いんだからなー。全力で行くぞ!」



??「あれ? あの人はもしかして......。へへっ、これは確認の必要がありますなあ」



104   2019/01/24(木) 20:51:25

P「おはようございます」

聖來「おはようござ......えっ? な、何? もしかして尾行してたの!?」

P「おいおい、いきなり物騒なこと言わないでくれよ。たまたま駅に向かってたら君が反対側から来たんだ。犬の散歩か? 朝早いのに大変だな」

聖來「......じゃあそういうことにしといてあげる。別に散歩は大変なんかじゃないよ。わんこと歩くの楽しいし」

P「そういうものか。ところで、こっちも帰り道で時間があまりないんで本題......というより昨日の続きを話したいんだけど」

聖來「ああ、本当に楽しんで踊ってるのか、ってやつ? まあ、確かにアンタの言う通りアタシは全力出せてないけど、それでも楽しいよ。気の合う仲間と一緒に一つのものを作り上げるって楽しそうだと思わない?」

P「それについては大賛成なんだが......君が本当にしたいのは楽しいだけのダンスなのか? 大きなステージで全力のパフォーマンスを見せて、観客全員感動させる。そんなことを夢見てダンス始めたんじゃないのか? 楽しむだけが目的だったらあのレベルまでは到達できないぞ」

聖來「確かに始めた時はそうだったよ。でももう違うんだ。どんなに頑張ってもアタシは所詮ちょっと器用な路上パフォーマーくらいにしかなれないから。アタシくらいのレベルなんか山ほどいるし、それにもう夢見てられるような年齢じゃないし」

聖來「だから諦めたの。っていっても決めたのはついこの前で、だからこそアンタに気づかれて、質問にも即答できなかったんだけどね」

P「なるほど、ギリギリセーフだったってことか」

聖來「なんのこと?」

P「今まで黙ってたけど、実は俺は東京の芸能事務所で働いてるんだ。まあ、スカウトマンってやつだな。そこでだ、アイドルやってみないか? 大きなステージ、沢山の観客、信頼できる仲間、ライバル。なんでも揃ってるぞ」

聖來「へぇ、スカウトマンなんて実在するんだ。じゃあ横にいるその二人もアイドルなの? やたらかわいい子連れてると思ってたけど」

忍「そうです! アタシは工藤忍。アイドルっていっても昨日が初仕事だった新人だけどね」

梨沙「アタシは的場梨沙! いつか絶対にトップアイドルになるから覚えておいた方がいいわよ!」

聖來「アタシも名乗ってなかったね。水木聖來だよ」

P「自己紹介もいいけど、スカウトの件どうしたい? 強要はできないけど、チャレンジしてみないか? やりたいことやらない人生なんてつまらないだろ?」

聖來「まあ、魅力的な話ではあるけどね。童顔なんだけどアタシもう23歳なの。そろそろ現実見ないとね。アイドルならなおさらじゃない? 流行りの子って大体10代の子だし、この二人もそうでしょ?」

P「まあ、確かに20過ぎでアイドルデビューってのは滅多にないことだな。でもそれに何の問題があるんだ? 成功例だって山ほどあるし、水木さんなら成功出来ると思ったからスカウトしたんだ」

聖來「んー、でもやっぱりアタシはできないかな。せっかくちゃんと就職して両親安心させられたのに、今更アイドルやるなんて言えないよ。悪いけど他をあたって?」

P「そうか......そこまで言うなら仕方ないか。一応名刺だけは渡しておくから、いつかやりたくなったら連絡くれ」

聖來「ありがと。多分しないと思うけど」


105   2019/01/24(木) 20:52:25

梨沙「ねえ、電車の時間大丈夫? 結構長く話してたけど」

P「......あっ! まずい、もう過ぎてる......。次の電車は......20分後か。結構待つな......」

聖來「まだ通勤ラッシュ前だから仕方ないよ」

梨沙「じゃあ、時間あるならセーラと一緒に踊ってみたい! 昨日は出来なかったし!」

聖來「もちろんいいよ! 曲は何にする? 聞いたことあるやつなら多分出来るけど」

梨沙「昨日の曲でいいわよ!」

聖來「じゃあそれでいこうか!」

忍「梨沙ちゃんのダンス、初めて見るなぁ。どんな風に踊るんだろう」

P「俺も得意ってことしか知らないから分からんな」


106   2019/01/24(木) 20:52:53

--5分後
梨沙「あー楽しかった。アタシもこういうのお仕事でやってみたいなー」

聖來「すごいね! 1回見ただけでほとんど振り付け覚えてるなんて」

忍「二人ともすごいなぁ。アタシの見様見真似のダンスとは訳が違うよ」

P「忍も決して下手ではないんだけど、これがトレーナーの有無の差なんだろうな」

聖來「レッスントレーナーとかいないの?」

P「ウチは小さい事務所だからな。いないというより、雇う金がないんだ。最近資金の目星がついたから引き受けてくれる人を探してるんだけど......」

聖來「......へぇ、大変なんだ。いい人が見つかるといいね。ところで、そろそろ時間丁度いいんじゃない? あと10分で電車来るよ?」

P「そうだな。じゃあ帰るか。連絡待ってるからな。いつでも大歓迎だ」

聖來「うん、期待しないで待っててよ」

P「待っててってまるで連絡するみたいなこと言わないでくれよ。期待しちゃうぞ?」

梨沙「じゃあね! 一緒に踊れて 楽しかったわ!」

忍「元気でね!」


107   2019/01/24(木) 20:53:18

??「おーい! そこのお姉さーん! ちょっといい?」

聖來「え? 何?」

??「さっき男の人に名刺もらってたよね? ちょっとだけ見せてもらってもいい?」

聖來「名刺? いいのかな? 連絡先とか色々書いてあるけど」

??「大丈夫! あの人、私の知り合いかもしれないからその確認だけ!」

聖來「だったらあの人に直接話しかければいいんじゃない? 今なら追いかければ間に合うよ?」

??「分かってませんなあ。捜査の醍醐味は聞き込みだよ? 本人に聞いたら面白くないでしょ?」

聖來「捜査って......まあ、知り合いならいいけど......はい、これが名刺」

??「ありがとう! どれどれ......スピカプロダクション代表、P.......なるほどなるほど、やっぱり思った通りだったよ! 昨日見失ったときはどうしようかと思ったけどホテルが同じで助かったね。お姉さん、この名刺、写真撮っていい?」

聖來「いいけど、ヘンなことに使わないでよ?」

??「もちろん! あーちゃんに報告するだけだから!」

未央「それにしても、未央ちゃん、ファインプレーしちゃったかな?」
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108   2019/01/24(木) 20:53:38

--数分後、スピカプロダクション
プルルルルル

ちひろ「はい、スピカプロダクションで......あ、Pさんですか? はい......、はい? なるほど、分かりました。待ってますね」ガチャ

ちひろ「20分遅刻ですか......。今回はあのネタ使いますかね......」


109   2019/01/24(木) 20:53:58

--数日後、スピカプロダクション
ちひろ「今日はトレーナー志望の人が面接に来る日ですけど覚えてますか?」

P「もちろんですよ。忘れるわけないじゃないですか」

ちひろ「スカウトに夢中になって遅刻する人が何を言って......」

P「は、はい! すいません教えてくれてありがとうございます!」

ちひろ「なんて、冗談ですよ。根に持つタイプじゃないのは知ってるじゃないですか」

P「まあ、それだけ反省してるってことで......。とにかく、面接してきますね。いい人だといいんですけど......」

ちひろ「今度は遅刻しないでくださいね」

P「は、はいぃぃぃ!」


110   2019/01/24(木) 20:54:20

--喫茶店
P「ここも久しぶりだな。久美子と梨沙の面接したとき以来か。面接希望者はまだみたいだけど、俺じゃなくて向こうが遅刻か?」

カランカラン

聖來「ギリギリセーフかな? あ、いたいた! 東京の道は入り組んでて難しいね!」

P「え? は?」

聖來「あ、ごめんごめん、ダンストレーナー志望の水木聖來です! 面接お願いします!」

P「いや、どういうこと? 就職したからダンスは諦めたって言ってただろ?」

聖來「それはプロになることね。ダンスをやめる気はないよ。それから、前いた会社は辞めてきたから。こっちの方が楽しそうだし!」

P「そんな簡単に決めていいのか......?」

聖來「スカウトしてきたのはアンタのくせにそんなこと言わないでよ。それに形は違ってもダンスを仕事にできるってすごい魅力的なんだよ?」

P「いや、期待するなって言われてたからこの展開は予想してなかったな......」

聖來「そう? てっきりバレてると思ってたし、むしろ気付いてて欲しかったんだけど」

P「どこに気付く要素があったんだ?」

聖來「言ったでしょ、期待しないで待っててって。アイドルになるつもりはないけどそっちに行くってこと」

P「そんなので気付くかよ......」

聖來「それで、採用? 不採用? ちなみにさっきも言ったけど前の会社退職してるから後には引けないから」

P「もう採用だ、採用! 1本取られたよ」

聖來「やったね! それで、事務所はどこなの? 早く行ってみたいな」


111   2019/01/24(木) 20:54:49

--スピカプロダクション
P「ただいま戻りました」

ちひろ「あれ? 早いですね。その人はもしかして?」

P「ウチの専属ダンストレーナーの水木聖來です」

聖來「よろしくお願いします!」

忍「あ! 水木さん! アタシ達のトレーナーになるの?」

聖來「そうだよ。これからよろしくね」

久美子「この人が前話してたダンスの上手い人? よろしくね」

梨沙「そうよ! アタシと同じくらいだから相当上手いわよ!」

久美子「梨沙ちゃんと同じって言われても見たことないから分からないわよ......」

聖來「確かに上手だったよ。でも少し基礎が疎かになりがちかなとは思ったけど」

梨沙「仕方ないでしょ! ぶっつけ本番だったんだから!」

P「はいはい、喧嘩しない。トレーナー目線のアドバイスなんだから受け入れなきゃダメだぞ?」

ちひろ「なんかまた事務所が騒がしくなりそうですね」

P「そうですね。まあ、賑やかなのはいいことですが」


112   2019/01/24(木) 20:55:19

バタ-ン!

P「こら! 歌鈴! 転びながらドア開けるんじゃない! 壊れちゃうだろ......え?」

藍子「お久しぶりです、Pさん。ずっと探してたんですよ」

P「あ、藍子? なんでここが? いつかはバレると思ってたけどこんなに早くとは......」

藍子「この前未央ちゃんが茨城で仕事だった時にPさんを見かけたそうです。それで色々調べて私に教えてくれました」

P「それで何の用だ? 居場所が分かったから何となく来たってことはないだろう?」

藍子「ここに移籍しに来ました。デレプロはもう退所してます」

P「なんてことを......。こんなことにならないために何も言わずに辞めたのに......」

藍子「そんなことだと思いましたよ。Pさんもちひろさんも何も言わずにいなくなっちゃって、後任のプロデューサーさんも教えてくれませんし」

ちひろ「でも、デレプロ辞めたとなると、もうポジティブパッションの活動はできなくなりますよ? 他のデレプロ所属のアイドルからも共演NGがかかるかもしれませんし」

藍子「その時はその時です。未央ちゃんも茜ちゃんも賛成してくれましたし、仕事が無くなったらそれは私が事務所の力がないと何もできないレベルのアイドルだったってことですから」

P「でも......」

藍子「あと、移籍させてくれないんだったら私はアイドル引退します。もうデレプロには戻れませんし、Pさんとちひろさん以外の人とやるつもりはありませんから」


113   2019/01/24(木) 20:55:35

聖來「ねえ、あの人ってアイドルの高森藍子だよね? なんでPさんと知り合いなの?」

梨沙「プロデューサーは高森さんの元担当プロデューサーなの。何か訳ありらしいけどあんまり詳しく話してくれないのよね......」

久美子「あれが高森藍子......こんなに近くにいる......」

聖來「松山さん? どうしたの?」

久美子「あ、ごめんなさい。あと、久美子でいいわよ。Pに高森さんのライブ観させてもらってから目標にしてるのよね。アイドルとしてのタイプは結構違うんだけど」


114   2019/01/24(木) 20:57:12

藍子「やっぱりあの時のライブ、来てたんですね。見かけた人が結構いたのでもしかしたらって思ってましたけど」

P「まあ、チケット持ってたからな」

藍子「あのライブ、すごい好評でみんな喜んでくれたんですけど、私は全然嬉しくなかったんですよね。Pさんとちひろさんが一生懸命企画したライブなのに手柄は全部あのプロデューサーのもので、それを誰も疑わないんです」

ちひろ「まあ、そういうものですよ。私たちは事務所を追われた身ですから」

藍子「ちひろさんはそう言いますけど、私はそうは思いません。何より人の努力を踏みにじって威張っているあの人と一緒に仕事したくなかったんです」

P「でも、ウチでは藍子を受け入れられない。すでにトップアイドルの藍子をこんな小さな事務所で扱うことなんてできないよ。俺も一緒に謝りに行くからデレプロに戻るんだ」

藍子「私がデレプロに入ったばかりの時、アイドルが常に考えていなければならないことはファンのことって教えてくれましたよね」

P「ああ。確かにそうだけど、いきなりなんだ?」

藍子「私はそう教えられてからなによりもファンのことを考えてましたし、今もそうです。デレプロをやめてここに移籍しにきたのもファンのことを考えてのことなんです」

ちひろ「どういうことですか? メディアへの露出は減るでしょうし、デメリットの方が多いと思いますけど」

藍子「Pさんとちひろさんがいないと私は全力でステージに立てないんです。舞台袖で二人が見てくれてると思うから頑張れるんです。この前のライブで実感しました。好評でしたけど、私の中では大失敗でした」

藍子「そんな中途半端なお仕事をするくらいだったらいくらお仕事の数が少なくても全力を出せるところでやりたいと思ったんです」

P「こんなところに移籍したらなおさら全力なんか出せない。設備も資金もない。下手したら活動すらまともにできなくなるぞ。そんなことになったら申し訳が立たないよ」

久美子「ちょっと! さすがにそれは私たちに失礼なんじゃない? まるでもし活動できなくなっても私達にはなんとも思わないみたいじゃない!」

P「それとこれとは話が違う。そんなわけないだろう」

梨沙「高森さんのファンって確か数万人は超えてるわよね。ファンを大事に考えろって教えてくれたプロデューサーがその数万人を裏切れって言うなんて、ちょっとがっかりね」

P「でも、ファンは十分に満足してるんだ。結果的には裏切ってはいない。デレプロにいれば藍子はきっと引退するまで気の合う仲間とずっとファンを楽しませられる。ウチではそもそも続けられるかどうか......」

藍子「私がやりたいのは全力のパフォーマンスでファンの方に楽しんでもらうことです。アイドルを続けることじゃありません」

忍「久美子さんと梨沙ちゃんの言う通りだと思うな。私もファンのことを思ってデレプロ辞めた高森さんを突っぱねるようなPさんは見たくない」

聖來「Pさんと高森さんとの関係はアタシにはよく分からないけど、退路を自ら絶ってここまできたっていうのは相当の覚悟だと思うな。アタシもそうして面接に来たから分かる気がする」

P「......本当にウチでいいのか?」

藍子「何度もいってるじゃないですか。ここしかありえないですよ」

P「分かった。移籍を受け入れるよ。辛いことも多いと思うが、頑張っていこう」
http://u111u.info/jT66

115   2019/01/24(木) 20:58:10

藍子「はいっ! あと、もう一つお願いがあるんですけど......」

ちひろ「なんですか?」

藍子「ちょっと待ってて下さいね、今呼んでくるので」


116   2019/01/24(木) 20:58:31

ちひろ「なんでしょうね。面倒事はやめてほしいですけど......」

P「呼ぶって誰を呼ぶんでしょうかね」

藍子「連れてきましたよ。この人はトレーナー志望です。未央ちゃんからトレーナーがいないらしいって聞いたので......」

慶「あの、お、お久しぶりです!」

P「え? 慶ちゃん? どういうこと?」

藍子「デレプロ辞めた後に麗さんにトレーナーのツテがないか聞いてみたんです。そしたら慶さんを武者修行させたいってことで一緒にデレプロから移籍することになりました」

慶「私はデレプロではほとんど雑用係でしたし、実際にトレーナーとしての経験を積んだ方がいいってことになったみたいです」

ちひろ「これはナイスプレーですよ、藍子ちゃん! ダンスレッスンは聖來さんに任せることにして、それ以外を慶ちゃんに任せられればトレーナーを雇う資金も節約できます!」

P「なるほど、確かに大きいですね。レギュラー決まったとはいえまだ一つですし、抑えられるとこは抑えたいですからね」

忍「じゃあこれからはたくさんレッスン出来るってこと?」

P「ああ! 慶ちゃんの大学の予定にもよるけど、きっと忙しくなるぞ」

慶「あ、それなんですけど、武者修行中は休学することにしました。理論を学ぶのはいつでもできますけど、実践経験を積めるのは今だけですから。だから呼ばれればいつでもレッスン出来ますよ!」

P「マジか! ありがたいよ! これからよろしくな!」

慶「よろしくお願いします!」



ちひろ(レッスンも出来るようになったことですし、そろそろ大きなイベントとかに出たいですね......。オーディションに出すならなんのイベントがいいでしょうか......)


117   2019/01/24(木) 21:01:19

〜〜5話 Do your best!完〜〜


引用元:http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1538297576/